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下北沢から「人々の意志をはぐくむ」。2000年世代から「人生の学校」をつくりたい──cafe. millennium

動物モチーフのパンナコッタをはじめ、豊富なメニューで人気を集めるカフェ「cafe. millennium」。2000年生まれの若者3人が始めた店だ。

SNSを活用した発信や、メニューの可愛らしさから、いわゆる“流行りのカフェ”と捉えられがちだ。しかし、この店は単なる飲食の場ではない。活動の幅は広く、下北沢にあるカフェでは企業と連携して若者向けのワークショップ運営をしたり、教育団体との連携も行いながら、夢を追いかける多くの若者の居場所ともなっている。

根底にあるコンセプトは「人々の意志を育む」。代表の堀口かすみさんに、cafe. millenniumの活動に込めた思い、そして現在進行形で進めているさまざまな実験について話をうかがった。

コロナ禍のビラ配りから始めたカフェが、“仕事”に変わった

―まず、cafe. millennium立ち上げの経緯を教えてください。

最初は、4日間だけのイベントのつもりだったんです。コロナ禍で学校へ行けず、自分の将来が見えづらくなった2021年に3人の友達で集まり、「経営者になりたい」「料理人になりたい」「人が集う場をつくることが大好きだった私」の3人が集まって立ち上げました。「就活で忙しくなってしまう前に、誇りに思える思い出を何か一つ作ろう」と話し合い、4日間のポップアップイベントとしてカフェをやったんです。

当初、カフェを続けるつもりはありませんでした。でも、そのイベントで出会った同世代のお客様から「一緒に働きたい」と声をかけていただいたり、好きなことをハリボテだけど形にしている私たちの姿を見たことがきっかけで「自分の生き方と向き合い、転職を決意して会社を辞めた」なんて人もいて。自分たちの作った機会がきっかけでそうした人の変化が起こったことに衝撃を受けました。大人からしたら大した出来事ではないかもしれませんが、当時20歳だった私たちにとっては大きな衝撃を感じた出来事でした。

何者でもない自分たちの行動が目の前の若者や大人の人生を後押しできるんだと気づいたことをきっかけに、自分たちで場所を開いてみたいと思うようになり、もう少し続けてみることにしました。それで駅前の雑居ビル4階を間借りして、営業を始めました。

(左から)店舗マネージャー/地藏里桜さん/代表・堀口かすみさん

―コロナ禍に営業を開始されたとのことで、最初は集客にも苦労されたのではないでしょうか。

オープンしてから半年くらいは、本当に人が来なかったです。仲間とみんなで必死になってビラ配りをして、やっと人が来てくれるような状況でした。

でもある日、突然Instagramで、メニューのひとつ「なめらか天使の檸檬プリン」がバズって。それまでは全然人が来なかったのに、急に「階段の下まで行列ができてるよ」と仲間に言われて、本当に驚きましたね。そこから客数も一気に増えて、倍以上になりました。雑居ビルの4階という不利な立地でしたが、SNSの力もあり、状況がガラッと変わった感覚がありました。

―「なめらか天使の檸檬プリン」をはじめ、キャッチーなメニューがたくさんありますが、メニュー開発で大切にしている視点はありますか?

もちろん、人々のニーズも見つつ、美味しいだけでなく愛着の湧くメニューとは何か? をスタッフ達と考えてお届けしています。今では、「アニマルパンナコッタ」が大人気です。それに、私たちは創業からこれまでに作ってきたレシピストックが百種類以上あるので、それらのブラッシュアップもしています。

でもそれだけじゃなくて、最近特に意識しているのは、「メニューを通して、人の生き方まで届けたい」ということです。具体的には、仕入れているメニューや扱っている原材料の背景にあるつくり手の意志も、メニューを通して一緒に届けられる店にしていきたいと思っています。今後は、メニュー表にも原料の担い手や仕入れ先のブランドを紹介できるようなページをどんどん増やしていこうと思っています。

アニマルパンナコッタ『ワン!ナコッタ』
コーヒーミルクのパンナコッタに可愛らしい犬のアイスクリームを乗せた一皿
写真:cafe. millennium公式サイト

―「かわいいスイーツがあるお店」だけではない価値の提供を目指されているんですね。

そうですね。「かわいいスイーツがあるから来ました」というお客様がいらっしゃっても、もちろんうれしいです。そのようにスイーツを目的に足を運んでくれたお客様が、店で過ごす時間の中で、このカフェに関わる様々な人の生き方やストーリーも受け取って帰ってくれたらいいなと思っていて。

だから、愛らしいスイーツのように“お客様と出会うきっかけとなる可愛いスイーツ”も、これからも残すつもりです。ただ、そこで終わらせたくない。この場に来てくれた人々が、ここでいろんな人の”生き方”に触れたり、自分の生き方を見つめ直したりして、ほんの少し前向きになれる。そうした体験を、メニューやここで企画されるイベントや人とのコラボレーションを通して設計していきたいです。

カフェはゴールじゃなく、手段のひとつ。「生き方」を問い直す時間を届ける

―カフェ営業だけでなく、企業連携などにも取り組まれているそうですね。そういった活動の背景にも、「他者の生き方に触れること」や「人生の後押し」といった価値への思いがあるのでしょうか。

はい。カフェの空間を活用して企業さまと共にワークショップを企画運営したり、カフェに限らず外部でも人材育成に関わる取り組みの一環としてイベントやワークショップの企画・運営を行っています。飲食店の機能も活かして、イベントなどの際に出張カフェ(ケータリング)を通して交流の場を開いたりもしています。

私たちの活動の軸にあるのは、若い世代や、今生き方に悩んでいる大人に向けて、「自分がこれからどうあるべきか」を問い直す時間を届けたい、ということなんです。カフェも、その他の活動も、すべてこの想いを実現するためのための手段だと捉えています。

だから外部で出店する際も、単に食事を出すだけではなく、可能であれば少し自分たちの思いをお話しする時間をいただくようにしています。まずは「外部の方や組織、大人に私たちの活動を理念を知ってもらう」ことが大切だと思うので。

cafe.millenniumで実施されている学生起業家向けの対話イベント「cafe day」の模様
millenniumが企画/運営を担当した。

―それらの活動の一環として、下北沢駅前施設ミカン下北 とのコラボレーション企画「夢ポスト」も実施されたんですね。

そうですね。これは、今の想いを手紙に綴ってポストに投函してもらい、“1年後のあなた”のもとへ届ける仕組みで、2025年10月に実施しました。予想としては200件程度集まればいいなと思っていたのですが、実際には300件も集まりました。都内から移動が1時間以上かかるエリアからも書きに来てくださった方がいたんですよ。

なかには手紙の中身を見せてくださった方もいたのですが、それらを読んで「一緒に叶えたい」と感じました。ただ人の思いに耳を傾けるだけではなく、一緒に実現ができる活動にしていかねばと、気が引き締まる取り組みでした。

一年後の自分に手紙を書き、投函すると一年後に自分の元へ届く体験型の手紙投函イベント <手紙投函イベント millennium dream(ミレニアムドリーム)>

―若い世代の応援という観点で、最近、新たに始められた活動もありますか?

月に一度、cafe. millenniumにいろいろな生き方をしている大人をゲストとして呼んで、トークセッションをする「COFFEE TALK」という企画を始めました。

単なる就活や転職のためのトークイベントというより、多様な生き方を知ることと内省することに焦点をあてた取り組みにしています。「人生ってこういう道の選び方もあるんだ」「挫折や失敗は怖いものではない。挫折があっても大丈夫」といったことをリアルに感じてもらえる場所にしたくて。

社会に出ると私たちはついつい「答え」ばかりを探してしまいます。ですが、今私たちに必要なのは「答えのない問いや自分の内面に向き合う機会」だと思っています。カフェという老若男女が集い、フラットに語ることのできる空間こそこうした機会を届けて行くべきではないかと考えています。

COFFEE TALKの模様

“やりたい”にYESが返ってくる街、下北沢

―活動の拠点を下北沢にしているのはどうしてなのでしょうか。

創業メンバー3人とも、一番好きな街が下北沢だったんです。だから、一番最初から下北沢で物件を探していました。
でも実際にこの地で活動してみて思うのは、「下北沢だから」この活動を続けられているんだなということです。街の空気が、私たちの背中を押してくれた感覚があるんです。

下北沢って、新しいものを許容するカルチャーがありますよね。外から入ってきたものを、街のみんながカジュアルに受け入れてくれる。だから何かやりたいと言ったときに、周りの人が「それいいじゃん」って応援してくれるんですよね。否定されることがあまりない。
それに、下北沢は想いや夢が“消費”される街ではなくて、“実現”できる街だと感じています。表面的に「面白いね」と言われて終わるのではなくて、ちゃんと街の人たちが“人と人として”関わってくれる感じがあって。その土壌があるから実験が続けられていると思います。

―おっしゃるように、ミカン下北や周辺施設とも連携して活動されていますよね。

先ほど話に出た夢ポストもまさにそうです。ミカン下北の開業とともに、下北沢の中でいろんな取り組みが“見える化”されていって、私たちもエリアの動きと連動しながら活動してきました。

それから、cafe. millenniumは一度移転して、現在は「ロバート下北沢」というコワーキング施設に併設して運営しています。そのおかげもあり、お互いにイベントでコラボしたり、外で発信し合ったりと、良い循環が生まれました。コワーキングを使っている人生の先輩方が、ふらっとカフェに来て雑談したり、活動のヒントをくれたりするのも、下北沢らしいなと思います。

「人生の学校」のような場所を、フラットなチームで作りたい

―創業から5年が経ち、現在はどんなチームで活動されているのでしょうか?

今も、学生を含む20代のメンバーを中心に運営しています。それぞれが得意なことを活かしながら、柔軟に活動しています。

チームの雰囲気としてはフラットかなと思います。「トップがいて、部下がいて」というより、「中心に人々の意志をはぐくむという理念があって、そこにみんなが集まる」みたいな感覚のほうが近いです。誰かが偉いから動くんじゃなくて、面白いと思うから動く。そんな組織です。

―同世代で働くことの良さもある一方で、難しさや壁を感じることはありますか?

20代だけで運営しているからこそ、経験や知識が足りないのは課題だと思います。だからたまに、年次の高いゲストをカフェに呼んで話を聞くこともしています。若いだけだと勢いで突っ走っちゃうこともあるし、理想だけで動いて崩れることもある。だからこそ、世代を越えて混ざることで、バランスを取っていきたいと思っています。

また最近課題に感じているのは、「学生カフェ」という切り口だけで見られることが多い点です。実際、学生の時に創業しましたし、メディアで取り上げていただくことはありがたいのですが、cafe.millenniumの価値は”学生カフェ”であることではないので、それだと自分たちが本当にやりたいことが伝わらないなと感じていて。

私たちは「若者たちの意志を育む」ことを目指してさまざまな活動をしているので、そういった価値も伝えられるように、見せ方を考えていかないと、と思っています。

―これから、cafe. millenniumをどんな場所にしていきたいですか?

「人生の学校」のような場所にしていきたいですね。cafe. millenniumに来たら、人々が自分の人生と向き合うことができる。ほんの少しでも”自分、前向きになれるかも”って思ってもらえるような。

2026年2月には、京都で約2週間“出張出店”を行います。京都を拠点に活動する若者とのコラボを企画しています。下北沢で生まれた『人の意志を後押しするカルチャー』を、別の場所でも届けて行きたいんですよね。cafe.millenniumに来てくださり、前向きになった人がまたどこかで誰かの後押しをしていく。そうして、人の意志を後押しするカルチャーがバトンみたいにつながっていったらいいな、と思っています。

Information

取材・文:白鳥菜都  撮影:YUKI KAWASHIMA
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株式会社millennium
<事業内容>カフェ運営/プロデュース、キャリア支援、学生向けイベント/セミナー等の企画・立案・実施・運営

cafe. millennium
〒155-0031 東京都世田谷区北沢2丁目30−14 3F
12:00–17:00 (Sat/Sun) 19:30-23:30 (Thu)
※最新の営業スケジュールはInstagramよりご確認ください
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