6月18日(木)、「下北線路街 空き地」にて『青空下北妄想会議』が行われた。
『下北妄想会議』とは、京王電鉄ならびに沿線の商業施設の運営を手掛けるグループ会社京王SCクリエイションと、働く場づくりに関するさまざまなサービスを手掛けるヒトカラメディアがタッグを組み、長期的な街づくりの視点から継続開催しているプログラム。これまで、京王グループが運営するコワーキングスペース「SYCL by KEIO」を中心に開催されてきたが、今回は「下北線路街 空き地」に飛び出す特別版として実施された。初の野外開催となったこの日は、午前中に降った雨も上がり、タイトル通り、青空のもとで開催された。

妄想から街の実験が生まれる場
『下北妄想会議』は、個々人の「下北沢でこんなことをやってみたい」という妄想を起点に、街のプレイヤーが繋がる場として続いてきた。これまで13回以上開催され、さまざまな実験やコラボレーションを生み出している。具体的な企画として固まっていなくても、ふとした思いつきや関心から参加できるのが特徴。和やかな雰囲気の中で、まだ形になる前の思いや関心も、自由な妄想として持ち寄ることができる。
詳しい背景やこれまでの取り組みについては、以下の記事で紹介しているのでぜひチェックしてほしい。
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「下北線路街 空き地」とは

会場となった「下北線路街空き地」は、小田急電鉄が手がける「下北線路街」の一角にあるスペースだ。
「下北線路街」は、小田急線東北沢駅~世田谷代田駅の線路跡地を開発して生まれた新しいエリア。全長約1.7kmの跡地には、洗練された個店が集まる商業施設をはじめ、保育園、学生寮、温泉旅館など個性的な施設が並んでいる。なかでも「空き地」は線路街・下北沢エリアの端に位置する広場で、日常的にイベントが行われるほか、POP UPキッチンが出店していることも。行くたびに新しい景色に変わり、さまざまな体験が楽しめる場所だ。
そんな「下北線路街 空き地」で、なぜ『下北妄想会議』が行われることになったのか。きっかけは「下北線路街 空き地」を運営するUDS株式会社の李さんと『下北妄想会議』担当者の出会いだ。ともに下北沢をフィールドにとするふたりが繋がり、「妄想をきっかけにプレイヤーが集まる場」と「彼らが実際にコトを起こせる可能性がある場」が掛け合わされた。こうして、京王グループが取り組む『下北妄想会議』と、小田急電鉄が手がける「下北線路街 空き地」という、鉄道事業者の枠を越えた異例のコラボレーションが実現した。

UDS株式会社・李さん。当日のスタッフは、限定制作の「下北妄想会議Tシャツ」を着用。下北沢のTシャツ工房・スティールファクトリーの協力のもと制作されたオリジナルTシャツ。
李さんによると、「下北線路街 空き地」では、平日の活用方法を模索していたという。土日は毎週イベントが行われ賑わう一方、平日は比較的落ち着いた時間が流れている。
「休日に遊びに行く場所として親しまれている一方で、平日に下北沢で生活する人や働く人にも、もっと活用してもらえる場にしていきたいと考えていました」と李さんは話す。
さらに、単発の利用だけでなく、継続的に関わる人とのつながりを育んでいきたいという思いもあったとのこと。そこで、下北沢で繰り返し開催され、人と人とのつながりを生み出してきた『下北妄想会議』との親和性も高く、今回の開催へと繋がった。
青空のもとで、妄想会議

『青空下北妄想会議』は、ワークシートを用いた妄想からスタートした。ワークシートに書かれたタイトル・イメージイラスト・解説の欄を埋めながら、それぞれの妄想を膨らませることに。「空き地」という屋外空間を生かし、芝生に寝っ転がっての妄想もよし、土管に座ってもよし、ひとりでも誰かと語り合いながらでも自由な空間だ。


この日の参加者はいつもにも増して多彩で、大学生や下北沢に住む人・働く人、そしてなんと、韓国やイタリアにルーツを持つ参加者も飛び入りで参加。年齢・性別、国籍まで超えた交流が行われた。
ワークシートへの記入が終わったら、次はチーム内での発表へ。仲間の発表を聞きながら妄想を膨らませ、どんどんアイデアを付け足す追加妄想“追妄”も実施。仲間の発想が加わることで、妄想はさらに広がっていく。

チーム内での発表に続き、各チーム代表者からの全体発表の時間に。下北沢の傾斜を利用して流しそうめんを行う「巨大流しそうめん」、社会人が休日にカフェや古着屋でボランティアインターンをする「社会人向け週末インターン」、といった多種多様な妄想アイデアが語られた。なかでも印象的だったのは、街全体を盤面に見立て、ミッションをクリアしながら遊ぶ「下北沢リアルすごろく」の妄想発表だ。アスファルトの地面に直接チョークで図を描きながら、自身の妄想をのびのびと語る姿は、会場の目を釘付けにしていた。

最後にはステージ上にそれぞれのシートを展示し、イベントは終了。天候にも恵まれ、和気あいあいとした雰囲気のなかで行われた『青空下北妄想会議』は、参加者たちの満足げな表情で幕を閉じた。

イベント終了後、たまたま出会った関係者から誘われたという、イタリア人男性に話を聞いた。約10か月前に来日し、下北沢に住みながらモデルやDJの活動をしているという彼は『青空下北妄想会議』を振り返り「普段できない体験で楽しかった」と語る。日本人・外国人問わずさまざまな職業の友人がいるそうで、下北沢でたくさんのアーティストが交わるイベントを開催してみたいと妄想を語った。
彼いわく、下北沢は「Very artistic town.」。初めて下北沢を訪れたときに「自分の居場所」だと確信したそうで、渋谷や新宿に比べて“ローカル”であることに魅力を感じたとのこと。大きなショッピングモールのような場所ではなく、ここで“生活”している実感が得られることにも魅力を感じたという。

取材中の『東京都実験区下北沢』スタッフが出演予定の音楽イベントを「見に行く」と約束しており、新たな繋がりが生まれていた。
妄想が繋がる新しい街へ

イベント終了後「下北線路街 空き地」運営の李さんに話を聞くと、「平日に人が集まっている状況を見て、本当に嬉しい」と表情をほころばせた。普段から出店希望者と話す機会はある一方で、下北沢で生活する人や働く人の声に直接触れられる機会は多くなかったという。だからこそ、この日は地域に関わる人たちの思いやアイデアを知る貴重な機会になったようだ。
そして、この日の出会いは一過性ではなく、今後に繋がりそうな期待感も持っている。合間で個別に「こんなことできないか」と相談してくれた参加者もいたようで、「空き地だけではできなかった“やってみたい”想いが具体的に見えてきてすごく嬉しい」と語る。
「1回の開催でこんなに広がるのであれば、2回目、3回目と継続的に取り組んでいきたい。そうすれば、全体で“みんな一緒になにか活動をしている”街になれるのでは」と李さんは構想する。「楽しい街になっていくイメージが見えて、働くモチベーションになりました」と想像を広げていた。
「下北線路街 空き地」という街の余白に、年齢も国籍も職業も違う多様なプレイヤーの妄想が入り混じった今回の『青空下北妄想会議』。ここで生まれたアイデアたちは、決してその場限りの絵空事ではない。場所を持つ企業と、アイデアと熱量を持つ個人がフラットに繋がることで、個々人の妄想は実行可能な「街の実験」へと変貌していくのだ。
次回の『下北妄想会議』は、7月17日(金)にタリーズ下北沢店で初開催予定。「下北沢でこんなことをやってみたい」……そんな妄想を持っている人も、今はまだ思いついていない人も、気軽な気持ちでぜひ足を運んでほしい。
