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【東京都実験区下北沢 1周年対談】下北沢で起きた数々の実験、そして次に企むこととは?フィールドを飛び出したプレイヤーたちが語るコラボレーションの可能性

2023年3月13日(月)、ミカン下北内にあるスタジオ「砂箱」にてウェブメディア『東京都実験区下北沢』1周年を記念する配信イベントが行われた。本イベントのテーマは、『シモキタで起きた私たちの”実験”とこれから。』。これまで取材したプレイヤーの中から3人に登壇いただき、下北沢を基点にクロストークを実施。それぞれが下北沢で行ってきた実験やエピソードのほか、今描いている“妄想”についても共有した。下北沢で活躍する3人が描く次の実験とは?そして、2年目に突入する『東京都実験区下北沢』のテーマとは?

共通項は「飛び出す」

あらためて『東京都実験区下北沢』を説明すると、「下北沢を舞台にチャレンジングな取り組みを仕掛けるプレイヤーに密着する」メディアである。キーワードは、“実験”。2022年3月に誕生して以降、下北沢で起きた実験の裏側にあるストーリーや人に注目しながら様々な事例を発信してきた。今回イベントに登壇したのは、演劇プロデュース団体・エリィジャパン総監督・石垣エリィさん、構成作家・比嘉夢丸さん、刺繍アーティスト・フクモリタクマさん、そしてミカン下北運営責任者であり「ミカン下北実験区長」の角田匡平さんだ。『東京都実験区下北沢』編集長の雨宮崇人がMCとなり、それぞれの目線から下北沢について語った

イベント冒頭、それぞれの「下北沢との関わり」が話題に。長年役者として活動を続けているエリィさんにとって、演劇が盛んである下北沢は縁の深い場所だ。彼女にとって特に大きな転機となったのが、ライブハウス『ろくでもない夜』オーナー・原口氏との出会い。かつて夢破れ傷付いた彼女は、原口氏からかけられた「ハコ代は売れてからで良いから」という言葉で救われたという。
※エリィさんの取材記事はこちらから:https://jikkenku.tokyo/interview/2657/

石垣エリィさん

また、構成作家として活躍する比嘉さんにとって、下北沢は自身のキャリアを築くはじまりのような場所。きっかけは、自身が運営を務めるお笑いライブ『下北GRIP』の前身団体と出会ったこと。そこから作家としての道が拓けたそうで、その出会いが無ければ「今の生活は無い」と断言。今後も『下北GRIP』の活動をライフワークとして続けていきたいと語る。
※比嘉さんの取材記事はこちらから:https://jikkenku.tokyo/interview/2671/

比嘉夢丸さん

一方、刺繍アーティストのフクモリさんにとって、少し前まで下北沢は「ラーメンを食べに行く場所」という認識でしかなかった。ところが、もともと屋内で行っていた刺繍を人前でパフォーマンスするようになり、場所を探していたときに知人からミカン下北を紹介されたという。ミカン下北でポップアップストアを開いたことで、古着の街と刺繍の相性の良さに気付いたという。
※フクモリさんの取材記事はこちらから:https://jikkenku.tokyo/interview/2561/

フクモリタクマさん

それぞれの下北沢への強い思い入れを語りながら、エピソードを共有する中で見えてきた共通項は、各々の“実験”のスタイルが似ているということ。3人とも、“自分の拠点を飛び出す”実験を意識していたのだ。

エリィさんは小劇場を飛び出し、飲食店で演劇を行う『THE ONE TABLE SHOW』を2022年12月に実施。比嘉さんが運営する『下北GRIP』は今後は「劇場を飛び出し、街中でお笑いライブをする」ことにもチャレンジしたいと語る。またフクモリさんは、アトリエを飛び出し路上で“刺繍”をパフォーマンスしている。さらに角田さんも、今後は「ミカン下北を飛び出し、街に飛び込んでいきたい」と語る。

角田匡平さん

エリィさんは、ここ数年で「飛び出さないと変わらない」と思うようになったという。編集長の雨宮からも、「飛び出すことでほかの分野とのクロスオーバーが生まれる」とコメントが。自分のフィールドから外に出ることで、演劇×飲食店、刺繍×書道(フクモリさんは今年書道アーティストとのコラボを実現)など新しいコラボレーションの可能性が広がっていく。2年目に突入した『東京都実験区下北沢』のキーワードは「飛び出す」になりそうだ。

MCを務めた雨宮崇人

次に企む実験とは

イベントの終盤には、それぞれが今後チャレンジしたいことを発表する「フラッシュ妄想会議」を実施した。

エリィさんから出たアイディアは、「下北沢24時間テレビ」。下北沢にゆかりの深い人が繋ぐリレーや、全国の劇場と中継をつないでひとつの演劇をつくりたいと構想を語った。あくまでもこだわるのは、“下北沢発”であること。カルチャーの発信地である下北沢を中心に、全国に飛び出したいという。

比嘉さんからは、ともに登壇したふたりとコラボレーションするアイディアが。エリィさんとは「俳優と芸人のエチュード対決」。俳優・芸人で異なる笑いへのアプローチを楽しむような試みができないか、と持ち掛ける。またフクモリさんに提案するのは、「芸人がディスプレイになるネタライブ」。フクモリさんが刺繍を手掛けた服を芸人が着て、ファッションありきでネタを考えるようなライブができないかと妄想を膨らませた。

さらにフクモリさんからは「自分のアトリエを構えたい」という妄想が。下北沢に拠点を持つことで、活動の幅を広げていきたいと構想を語った。エリィさんからも、「稽古場にできるような場所が欲しい!」と賛同が。飛び出すためには、拠点となる場所が必要だ。下北沢に”場所”を持つ人が増え、そこを基点に様々なコラボレーションが生まれていきそうだ。

ゲストの3人は、この日が初対面。出会って30分後にはクロストークが始まるという流れだったが、イベント終了後にはすっかり打ち解けた様子に。さっそく「こんなことやりませんか?」とアイディア交換がはじまり、それぞれの拠点を飛び出したコラボレーションの可能性が生まれていた。

下北沢には、様々なジャンルで活躍するプレイヤーが多数存在している。カルチャーが雑多に混じり合い、お互いのチャレンジを後押しする風土を持つ下北沢だが、コラボレーションの可能性はまだたくさん眠っている。それぞれが自分たちのフィールドを飛び出すことで、新たな可能性が生まれていくだろう。

『東京都実験区下北沢』はこれからも、下北沢で実験を続けるプレイヤーに注目していく。そしてプレイヤーを繋ぐハブとしての役割も持ちながら、この街のあらゆる実験を応援していきたい。

<東京都実験区下北沢 1周年特別番組の全編はこちら>
https://www.youtube.com/live/RAs8cvV1xzk?feature=share

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構成・文:堀越 愛
Jikken*Pickup_