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カルチャーの中心地・ヴィレッジヴァンガードから発信する、下北沢の新しい魅力。

下北沢のなかでも、あらゆるカルチャーが1か所にギュッと集まった場所が「ヴィレッジヴァンガード下北沢店」だ。文学・コミック・音楽・キャラクター・アパレル……ありとあらゆる商品が並び、店内のそこかしこにスタッフが愛情を込めて書いたポップが貼られている。この場所に渦巻くカルチャーの熱量を浴びると、「ヴィレッジヴァンガード下北沢店こそ“下北沢の象徴”なのでは」と思わされるほどだ。

ヴィレッジヴァンガード下北沢店で店長を務めるのが、米山才季さん。学生時代にアルバイトとして下北沢店に入り、様々な店舗での勤務を経て2020年12月に「店長」として帰ってきたという。長年サブカルチャーにどっぷり浸かりながら働いてきた米山さんから見て、下北沢とはどんな街なのだろうか。そして、下北沢店だからこその魅力とは?下北沢店のバックヤードで話を聞いた。

カルチャー好きの友だちを求め、ヴィレヴァンへ

—米山さんは、最初はアルバイトとしてヴィレッジヴァンガード(以下、ヴィレヴァン)下北沢店で働きはじめたそうですね。

そうですね。15年くらい前、学生アルバイトとして下北沢店に入りました。特にやりたいこともなかったので、卒業後も就職せずそのままバイトをしてたんです。店長候補生になったのをきっかけに、経験を積むため三軒茶屋店(2020年閉店)に異動。その後金沢店で初めて店長になり、町田・静岡・高円寺店を経て、エリアマネージャーを挟み、2020年12月から下北沢店にいます。

店長の米山才季さん。最近は時間が取れずなかなか書けていないそうだが、「ポップを書く業務が特に好き」だそう

—ヴィレヴァンでアルバイトをしようと思ったのはなぜですか?

もともと、音楽や文学、コミックが好きだったんです。情報交換をするような友人はいたんですけど、それらの分野に詳しい友だちがもっと欲しいと思って。友だち欲しさにヴィレヴァンで働きはじめました(笑)。

—カルチャー好きとの出会いを求めて、ヴィレヴァンを選んだのですね。下北沢店にしたのはなぜですか?

家が近いからです。下北沢店が関東第1号店としてオープン(1998年)する前から、親や友だちとよく来てたんですよ。

変わってて面白いヤツが揃うヴィレヴァン下北沢店

—ヴィレヴァンは様々な分野のカルチャーを扱うお店ですよね。米山さんご自身は、どうやって情報収集されているのでしょうか?

新しい情報は、取引先や働いてるスタッフたちから得ることが多いですね。特にスタッフはお客さんとも年代が近いので、助けられてます。彼らが「良い」と言ったものは、基本的に仕入れますよ。

—スタッフさんの意見も、品揃えに反映されているんですね!ヴィレヴァンは、各店舗に仕入れが委ねられているんですか?

はい。最近は、「この子の意見を聞きたい」と思ったスタッフに商談に同席してもらい、どんどん新しいものを入れています。今後は本や音楽など分野ごとに担当を付けて、彼らに発注権限を持たせていこうと考えています。

 

 

下北沢店の外壁に貼られた大きなポップ。これは、ヴィレッジヴァンガードと農林水産省がタイアップした日本の「食」と「農」の応援企画  https://nippon-food-shift.maff.go.jp/village-v/shout/

—ほかの店舗と比較して、下北沢店ならではの特色はありますか?

一定数、「カルチャーの街・下北沢」をイメージして来店するお客さんはいると思います。だからか、新しく話題になりはじめた人や商品に対する反応はすごく大きいと思います。具体例で言うと、浅野いにおさんの『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』。これは出たて(2014年頃)のころから、下北沢店でよく売れていました。

—たしかに、ヴィレヴァンはカルチャーを扱うだけではなく、“カルチャーの発信地”というイメージもあります。ほかに下北沢店でいち早く扱ったものはありますか?

Perfumeはけっこう目を付けるのが早かったと聞いています。僕がバイトで入るちょっと前ですが、めちゃくちゃゴリ押ししていた記憶がありますよ。下北沢店でイベントもやっていました。最近だと、水曜日のカンパネラ。下北沢店限定の特典CDを付けるコラボをして、ものすごい売れてましたね。

画像:ヴィレッジヴァンガード下北沢店公式Xより

—音楽系の事例は多そうですね。

音楽分野は腕のいいバイヤーがいたので、彼の力も大きいですね。あと下北沢店で特徴的なのは、アパレルが売れること。カバンや帽子、靴下とかはずっと売れてます。古着屋さんにはあまり品揃えが無い商品を、うちで購入してくれているんだと思います。これはファッションビルに入っている店舗には無い特徴ですね。

—下北沢店で働いているスタッフさんには、どんな特徴がありますか?

言語化が難しいんですが、基本的には明るくてマジメに働いてくれそうな子を採用しています(笑)。一応「好きなもの」も聞いてますよ。過去にびっくりした回答は、「クラッチバックが好き」と言われたこと。確かにその時期クラッチバックが流行ってたんですけど、ヴィレヴァンでは売ってないんですよ(笑)。全体的に、変わってて面白いヤツが多いです。

—「変わってて面白い」とは?

例えば、出勤したら毎回必ず「今週末のテレビ番組情報」を教えてくれる子とか。「今週の金曜ロードショーは〇〇です」「土曜日には『やりすぎ都市伝説』があります」とか、聞いてもないのに教えてくれます(笑)。みんながいる場で言うんじゃなく、一人ひとりに教えてくれるんですよ。あと、ひとりごとか話しかけてきてるのか分かんないヤツも何人かいます(笑)。変わってますけど、みんな明るくていい子ですよ。接客の邪魔にならなければ趣味を前面に出してくれて良いんで、エプロンにアニメの缶バッチをたくさんつけている子とかもいます。

下北沢に根付く老舗とコラボ

—下北沢は、ここ数年で再開発が進んで街並みがだいぶ変わりました。訪れるお客様層の変化はありますか?

1年くらい前から、外国人のお客様が増えました。あとベビーカーを押してる若い夫婦も確実に増えましたね。僕が働き始めたころは、お子様連れのお客様は滅多にいませんでした。

—米山さんが働き始めた当時は、どんなお客様が多かったんですか?

20代前半くらいの方、特に女性が多いですね。これは昔も今も変わっていません。

—米山さんから見て、下北沢はどんな特徴がある街だと思いますか?

いろんな街に住んできたけど、やっぱり下北沢は居心地がいいですね。子どものころに比べたらお店もだいぶ増えてにぎやかになりましたけど、長年通っているからなのか、ずっと居心地がいいです。あと、人のイメージは“ヒッピー”ですね。攻撃的ではなく、ラブ&ピースな人。カルチャーが好きで割と寂しがり屋で、ちょっとだらしないところもある……固定概念に捉われず生きている人が多いイメージです。

—下北沢店には、珉亭さん(下北沢の老舗中華料理店)のTシャツなどグッズが置かれていますよね。これはどんな経緯で置くようになったんですか?

このグッズは、珉亭で炒飯を作っている方が手がけたものです。もともとオンラインで販売していて、その方が「置いてもらえないか」と相談してくれて。いろいろと調整をして、最近になってようやく仕入れることができました。

画像:しもブロ公式Xより

—ほかに、下北沢の店舗さんとのコラボレーション事例はありますか?

新雪園(こちらも下北沢の老舗中華料理店)さんのキーホルダーやTシャツ、ステッカーなどを作ったことがあります(※現在は受注生産終了)。僕らがよく新雪園に行っていて、「好きだからやらせてほしい」と提案したら「良いよ~」と実現しました(笑)。個店とのコラボレーションはハードルが高いですが、今後もやれたらいいなと思ってます。

新雪園×ヴィレッジヴァンガードのオリジナルキーホルダーとTシャツ(画像:ヴィレッジヴァンガード下北沢店公式Xより)

—今後、下北沢店としてやっていきたいことはありますか?

僕ふくめ、働いている人の色をもっと出していきたいですね。そのほうが下北沢に来るお客さんには楽しんでもらえそうだし、売り上げも上がる気がするんです。あと漫画家さんのイベントとかも積極的にやっていきたい。それから、人気キャラに頼らず「『売れる』という確信はないが、自分たちは『面白い』と思う商品だけを置く」という取り組みもやってみたいんですよ。まずは実験的に、店舗の小さな一角からはじめてみようかな(笑)。

Information

取材・文:堀越愛 / 撮影:岡村大輔
ヴィレッジヴァンガード下北沢店
ヴィレッジヴァンガード下北沢店
1998年、関東第1号店としてオープン。「遊べる本屋」をキーワードに、様々なカルチャーに関連する商品を販売している。
Web
https://www.village-v.co.jp/shop/detail/679
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