クラウドファンディング開始3日で、目標金額の500%を達成……多くの“頑張る人たち”の期待を受けて、自然由来のリカバリードリンク「NORTH&SOUTH®」が誕生した。
「NORTH&SOUTH®」プロジェクトを立ち上げたのは、業界トップクラスシェアの公務員オンライン予備校を運営する起業家・平本一星さん。平本さんが下北沢のワークスペース「SYCL by KEIO」を拠点にどのように新規事業であるドリンク開発へ挑戦し、驚異の結果をただきだすことができたのか。その特殊な経歴を振り返りながら、話を聞いた。
頼れるお兄ちゃん的存在を目指し、2度の転職を経て起業
―平本さんは起業する前、会社員や消防士といった特殊なキャリアを経験していますよね。これまでの経歴を教えていただけますか?
大学を出たあと、大手タイヤメーカーに就職し、その後に消防士になりました。キャリアチェンジのきっかけは、仕事の休日に被災地の復興支援ボランティアによく行っていたこと。その中で岡山県倉敷市に行ったとき、働く消防士の方々を見て「人を助ける仕事ってすごくカッコいいな」と思ったんです。ずっと会社員を続ける気だったけど、人生は一度きりじゃないですか。それで決心して、働きながら勉強して消防士の採用試験に挑戦し、念願の消防士として働き始めました。しかし母が病気になってしまい、夜勤がある消防士では介護が難しくて……。母の介護に専念したいと思って、消防士は1年ほどで退職。その後、母が元気になったので、心機一転でベンチャー企業に転職し、そこで働きながら公務員予備校の会社を立ち上げました。
―大手企業で働きながら消防士試験の勉強をしたんですね。スムーズに合格できたのでしょうか?
いや、3年かかりましたね。当時は倍率も高く、100人受けても5人しか合格できないくらいでした。筆記試験も数学・物理・生物・文章理解など約20科目ありますし、体力試験もあるし、集団面接やグループワークもあって……時間制約があるなかで合格まで持っていくのは、すごく大変でした。
―合格まで3年。会社員として働くだけでも大変なのに、よくモチベーションが持ちましたね。
よく言われます(笑)。でもやっぱり、被災地で人を助ける様子を目の当たりにした原体験があったのが大きいと思いますね。瓦礫を撤去したり泥を掻き出したりするだけでなく、一人ひとりに対して「もう大丈夫ですよ」「無理しないでくださいね」など、声掛けをしていて。それを見て、僕も「人の心を救える消防士になりたい」と思ったんです。だから3年間ブレずに勉強できて、合格することができました。でも母子家庭でしたし、母も大事にしたくて……悩みましたが、1年ほどで消防士は退職しました。
―その後、ベンチャー企業で働きながら公務員予備校の会社を立ち上げたのはなぜですか?
3年かけて消防士試験の準備をしたなかで、自分と同じように苦労している受験生にたくさん出会ったんです。「専門学校に何百万も使ったけど受からない」「何年もチャレンジしているけど受からない」という人がたくさんいて。そういう人たちの力になりたいと思って、就業時間が終わってから個人的に発信活動をはじめたのが起業のきっかけです。当初は受験生に向けたYouTube配信をしたりしていました。

公務員予備校の創業者として累計1万人以上の受験生を支えてきた平本さん。7年間、市役所・県庁・国家公務員・消防士・警察官などの「全国の北海道〜沖縄で公務員を目指す」たくさんの受験生を教え、業界トップのオンライン予備校へと成長させた。(予備校名:公務員合格CAMPUS・FFS消防士ゼミナール)
―平本さんのキャリアを聞くと、行動の裏側には常に想いがありますね。「お金を稼ぎたいから働く」ではなく、人の力になりたいという想いが強い気がします。
「お金を稼ぎたい」は無かったですね(笑)。困っている人をたくさん見たし、僕自身も困っていたので……そういう人たちにとって“頼れるお兄ちゃん”的存在になりたいと思って、活動を始めました。YouTubeで顔出しをするようになったのも、相談しやすい存在になりたかったからです。
―ベンチャー企業で働きながら発信活動を続け、起業の準備をするのもすごく大変ですよね。
キツかったですね(笑)。僕が入社した年に上場したこともあって、すごく忙しくて。ただ、発信を続けているうちにどんどん問い合わせが来るようになったんです。「何年頑張っても受からなくて……」と悩んでいる方の長文の問い合わせを見ていたら、当時の自分を思い出してしまって。「せっかく頼ってくださったんだから頑張ろう」と、LINEで添削したりオンラインで面談したりと、続けることができました。

健康面でもサポートしたい。ドリンク開発に未経験から挑戦
―北海道と沖縄のスーパーフードを凝縮したドリンク「NORTH&SOUTH®」の開発にあたり、クラウドファンディングに挑戦されました。公務員予備校の経営とはまったく畑が違いますが、開発にいたるまでどのような背景があったのでしょうか?
予備校経営を続けるなかで、おかげさまで国内シェアトップクラスになることができました。でも、頑張りすぎて身体を壊してしまう人にたくさん出会って……。仕事や育児をやりながら試験に挑む方も多いですし、僕よりも上の世代の方もたくさんいます。そういった方々を見ていて「体内から健康的にサポートできる事業があれば」と思ったのが、ドリンク開発の背景ですね。予備校運営とはまったく違うことをやっているように見えるかもしれませんが、想いはずっと一貫しているんです。
―なぜ自分で開発しようと思ったのでしょうか?既存商品と提携するなど、ほかにもやり方はあったと思います。
新しいものを、ゼロからこだわってつくりたいと思ったんです。予備校の授業も、教材や模範解答、YouTube動画など全部自社でつくったんですよ。今までも自分のアイディアや行動力で実現してきましたし、自分で考えることでしか得られない学びがあります。
―協力先はどうやって探したのでしょうか?
未踏領域であることは自分でもわかっていたので、まずは本をたくさん読みました。次に、実際に健康食品やドリンクをつくれる会社に問い合わせをしましたね。日本にある、該当するすべての会社に「こういうドリンクをつくりたい」と問い合わせました。僕の想いに共感して「一緒にやりましょう」と言ってくれる企業はたくさんあったんですが、「北海道と沖縄の素材を組み合わせる」というこだわりを実現するのが難関でした。遠距離なので非効率ですし、利益重視の会社だと踏み込めない領域なんです。
―そもそも、なぜ北海道と沖縄の素材を組み合わせることにこだわったのでしょうか?
毎年、ワーケーションで北海道と沖縄の両方に行ってるんですよ。すごく空気も良いしご飯も美味しいんですけど、東京で働いているのでずっと滞在はできないじゃないですか。そこで「最南端と最北端の大自然の素材を、働きながら摂取できるサービスがあったら良いな」と思ったんです。マーケティングの観点でも、北海道と沖縄の掛け算はすごく面白そうだなと。2024年8月、北海道で露天風呂に入っているときに思いつきました。

SYCL by KEIO→下北妄想会議→studioYET…仲間とフィードバックがあったからこそできた実験
―平本さんはコワーキングスペースSYCL by KEIOを拠点にしていますよね。なぜ選んだのでしょうか?
石垣島でワーケーションをしたとき、SYCL by KEIOの利用者さんに出会ったんです。現地で焼肉に行ったり蛍を見に行ったりするくらい仲良くなって(笑)。彼がSYCL by KEIOを紹介してくれて、ほかとも比較した結果「素敵なコミュニティだな」と思って利用を決めました。Slackがあることで横のつながりや会話が生まれやすいのが、魅力だなと思いますね。すごく忙しい日々でしたけど、SYCL by KEIOのつながりで試飲会なども実現できましたし、入って良かったですよ。
―このプロジェクトには、SYCL by KEIOの会員さんが多く関わっているのだとか。
「NORTH&SOUTH®」のロゴやパッケージデザインなどは、SYCL by KEIOのつながりで制作いただきました。「studioYET」※1 に一緒に参加している方と、「studioYET」きっかけになって制作をお願いすることができたり、夜遅くまでSYCL by KEIOで作業していることも多いので、居合わせた方にアドバイスをもらったりすることもありました。僕から相談することもありますし、「最近どう?」と声をかけてくれる人もいて。
そもそも「NORTH&SOUTH®」はSYCL by KEIOにいたからこそ始まったプロジェクトとも言えます。露天風呂でアイディアを思いついたころ、ちょうどSYCL by KEIOのSlackで「下北妄想会議」※2 の告知があって、「これに出してみよう」と思ったんです。それで妄想会議に出て話してみたら、京王電鉄の方をはじめ、いろんな方が「面白いね」と言ってくださったんですよ。僕のアイディアを受け入れて「面白い」と言ってくれる方がいるんだと思えたので、実際に踏み込むことにしました。
※1:“やってみたい”を0.5歩前に進める実験応援プログラム。地域プレイヤーや京王グループ等にサポートしてもらいながら取り組みを進めることができる。
※2:「SYCL by KEIO」が中心となり開催しているイベント。「下北沢でこんなことやってみたい!」という妄想を起点に、街の人や企業を巻き込んで実験的なプロジェクトを生み出すきっかけの場。

SYCL by KEIOに所属する様々な会社のメンバーと仕事を共にして生まれたロゴやパッケージデザイン
―2024年8月にアイディアが生まれ、1年3か月後の2025年11月23日にクラウドファンディングがスタートしましたね。
順調でしたね。50回以上試作を重ねたので大変でしたが、提携した会社がだいぶ融通を利かせてくださって。色や溶けやすさなど、こだわって何度も試作をつくってくださいました。いろんな方の反応を見たかったので、試飲も累計500人以上にしていただきましたね。最初に「80%以上の人が美味しいと言ったら商品化する」とゴールを決めていたんです。今後もお客様からフィードバックをいただいて、どんどんブラッシュアップしていく予定です。
―クラウドファンディングをはじめて3日後には、目標金額300万円に対して500%の達成率を叩き出しました。
あらかじめまわりの起業家さんにお声がけしていたのが大きかったと思います。一人ひとりに会いに行ってプロダクトや商品のプレゼンをしていたんですよ。けっこう泥臭く、足をつかって営業しました(笑)。
―平本さんは「下北妄想会議」だけでなく「studioYET」にも参加していました。参加してみていかがでしたか?
「studioYET」はすごく良い場でした。月に1回みんなの前でプレゼンをするわけなので、内容だけでなく話し方とかもしっかりしなきゃ……と、プレッシャーもあるんです。これがあることによって「事業としてどうか」「納得いただけるプロダクト発表になっているか」と自分を見つめ直せるので、良かったですね。

【studioYET最終発表会での試飲会の様子】 (平本さんも参加したstudioYET 5期)ひとりじゃないからこその推進力『studioYET』5期最終発表会レポート https://jikkenku.tokyo/interview/3437/
―今後、「NORTH&SOUTH®」をどんなブランドにしていく予定ですか?
一貫して「頑張る人を支える」ことをやっていきたいと思っています。今開発しているグリーンのドリンクのほかに、今後は美容に特化したピンク色のドリンクも商品化する予定です。あとはドリンクにこだわらず、働きながら頑張っている人……例えば育児をしている方や会社員、フリーランスなど、何かをやりながら自分のスキルを伸ばしている人を支えられるようなプロダクトをどんどん作りたいですね。メイドインジャパンなので、海外展開もできたらと妄想しています。

クラウドファンディング期間は2026年2月10日までの開催となっておりますのでぜひご覧ください。
クラウドファンディングー忙しく、輝いている人へ。北海道&沖縄のスーパーフードを凝縮したリカバリードリンク – CAMPFIRE (キャンプファイヤー)
