「”やってみたい”を“やってみた”に。」がテーマの実験応援プログラム『studioYET』。その第0期メンバーの活動を振り返る最終報告会が「ミカン下北」の一角にあるコワーキングスペース「SYCL by KEIO」にて開催された。今回どのようにして、この実験的プログラムは発足したのか?そしてどんな可能性を秘めたプログラムなのか?発起人である京王電鉄株式会社の通称“実験区長”・角田氏への取材とともにイベント当日の模様に迫った。
妄想を実現する場所としてのstudioYETの役割
—今回、「studioYET」が始動したきっかけを教えてください
まず前提として、我々はミカン下北を起点に「いまよりも多様な人々が交差し→新しいチャレンジが生まれ発表され→チャレンジを見に来街する人が増える」という連鎖を生み出していきたいと思っています。下北沢で活動する人や企業をプレイヤーと定義し、彼らと大小さまざまなコトを起こしていくことが、街の魅力にもつながると考えているんです。
その“コトを起こす”ためにキーワードにしてきたのが「実験」や「妄想」という言葉。ミカン下北開業前から、誰かのやってみたいことを下北沢の街とつなげたり、アイデアや妄想を発散するきっかけや出会いの場として「下北妄想会議」という取り組みを行っていました。
下北妄想会議を何回か実施していく中で、多くの妄想が集まり、いろんな人が出会う場所としては機能していましたが、ではその妄想を誰がどうやって実現するか? という部分が課題でした。それで妄想の発案者が主体的にコトを起こしていく仕組みが必要だと感じ、「studioYET」というプログラムを立ち上げることになったんです。。
YETは、「まだ…ない」の意味です。まだ誰にも見せたこともない自らの妄想を、このプログラムを通じて世の中に伝えてほしい、という想いを込めており、ここから下北沢で面白いプロジェクトやビジネスの種が生まれたりしたら嬉しいなと思っています。
—studioYETではどのような応募資格や条件を設けているのですか?
studioYETでは、妄想を実現するために応募者の方が主体的に取り組んでもらうことを一番の目的に置いているので、採択するという考え方がなく、以下の3点を参加基準にしています。
①「やってみたい」にもとづいて参加すること(将来性やビジネス性は問わない)
②応募者自らが率先して「やってみたい」の実現を推進すること
③応募者が自分自身の「やってみたい」にワクワクしていること
—具体的にはどのようなプログラム過程なのでしょうか?
前面談から始まり、キックオフミーティング、中間発表、最終発表という流れで約3ヶ月かけて進めます。そして妄想を実現していくために事務局が伴走していくのがこのプログラムのスタイルです。
応募者には、事務局である京王電鉄およびヒトカラメディアのメンバーが壁打ち相手となり、実現するためのアイディア出しや実現までの進め方をミーティングしたり、協力者になってくれそうな街の方々を繋いでいたりします。
また、プログラムサポーターとしてミカン下北を中心に様々なアセットを持っているプレイヤーが参画しているので、妄想を実現する場所も準備しています。なので、“人”も“場所”も含め下北沢の街をあげて応援するような体制作りを心がけています。
とはいえ、立ち上げたばかりのプログラムなので、伴走の仕方などもまだまだ模索中。新しいプログラムの実験に付き合って頂きたいという意味合いも込めて、「0期生」として参加者を募集しました。
アットホームな雰囲気で行われた最終発表会
そして、最終発表会では、3ヶ月間共に寄り添って支援していたサポーターたちが見守るなか、0期生として参加したメンバーによる、熱い想いを込めたプレゼンテーションが行われた。
プレゼン後はサポーターや来場者から0期生1人1人に対して、熱い応援コメントシートを届けるなど、皆で実験を応援する姿勢を感じるアットホームな光景が見られていた。
熱いプレゼンテーションを終えたstudioYET 0期生コメント
—今回、studioYET 0期生としてチャレンジしてみた感想はいかがでしょうか?
戸ノ岡氏(会社員):
自分は妄想会議から参加したんですが、いろんな方が自分の妄想をポジティブに捉えてくれて嬉しかったです。出会って、語り合って、繋がるという何かが生まれる予感を感じさせてくれました。
私は「下北沢で頑張ってる人の癒しの休憩拠点を作りたい」というテーマで取り組みました。
具体的なアクションまでは辿り着けなかったですが、自分の意思を貫き、提供できるものとをマッチングさせつつ考えることができた充実した3ヶ月間でした。
永瀬氏(大学生):
私は現役の大学生なのですが、studioYETは大学では得られない将来に役立つ経験ができた貴重な期間だったし、改めて実験って面白いなと思いました。
歴史を専攻しており、歴史を使って地域を盛り上げたいという想いから、今回YETでは「世田谷野菜の地産地消の取り組み」と「下北沢の偏愛を集めたルート作成」を題材に取り組みました。
何かをやってみるという土俵に立てる初めての機会だったので、今まで味わえなかった感情がどんどん芽生えてきたし、背中を押してくれるサポーターの皆さんのおかげでいろんな繋がりを持たせてもらったので、プログラムが終わっても活動していくベースが作れました。
何かやってみようよと応援してくれてるってとても心強いので、自分と同じような大学生にめちゃ向いてると思います。
森木田氏(実業家):
私は「下北沢を日本一実験に挑戦する人に優しい街にする」をテーマに取り組みました。
「ホンネPOST」という、実験を体験したユーザーが、事業者に対してサクッと感想や要望などのフィードバックを行えるコミュニケーションツールを作っているのですが、これを活用して下北沢の街ぐるみで根付かせる仕組みを作りたかったんです。
今回プログラムを経験してみた感想として、街と繋がりたい人には本当におすすめです。
プログラムサポーターの皆さんが街のキープレイヤーへ即アポしてくれたり、アドバイスをくれたりなどフルサポートしてくれました。下北沢を「日本一事業が生まれやすい街」にしてもっと盛り上げたいと思っているので、今後はstudioYET1期生の実験をサポート側で支援したいと思っています。
0期生たちを支えたプログラムサポーターのコメント
—今回、サポーターの皆様も手探りでの実験プログラムだったと思いますが
0期生のプレゼンを聞かれていかがでしたでしょうか?
Konel 澤部氏(プログラムサポーター):
ビジネスの世界では、正解や成功法を1発で出さなきゃいけないっていう機会が多いですが、
最初想定してたことから全然違う方向に行ったり、色んな転がり方をした実験過程の後にやっぱ正解は出てくるんだとプレゼンを聞いていて思いました。
studioYETを通じて色んな人が様々な実験をして、世の中に素晴らしいプロジェクトやサービスを生んでいける可能性があるし、そういう人がたくさん増えてほしいなとすごく感じました。
ヒトカラメディア 高井氏(プログラムサポーター):
場というのは熱源の増幅装置であるという風にも捉えてるんですが、場に思いがあって、コンセプトがあり、そこに応援してくれる人がいて、ちょっと後押しをする何かみたいなものがあると、物事って大きく進んでいくなという風に感じました。可能性を掛け合わせながら、様々なことが生まれたら最高です。
ヒトカラメディア 柳川氏(プログラムサポーター兼運営事務局):
0期生の皆さんが腹落ちしながら進んでいくことがとても大事なのかなと思っており、徹底的に彼らとの議論に付き合おうとYET発足時から決めていました。
本日発表していただいた方々が次のステップに進めるようなきっかけが生まれてたらいいなと思っています。
京王電鉄 菊池氏(プログラムサポーター兼運営事務局):
私たち自身がこの0期という名前の実験をさせていただいていて、1つ1つずつをやりながら勉強させていただき進めていったのが新鮮な経験であり、とても楽しかったです。「京王電鉄」だからこそ応援出来ることもあるのかな、と気づくことができました。これから新たに1期をスタートしていく中でも、改めて我々が提供できる価値を見つめていきたいと思います。
どんなスタート地点でもあなたのチャレンジを応援する。
妄想に留まらず、コトを実現させるためのサポートプログラムを立ち上げた運営メンバーと、それぞれ想いを持ってプログラムに取り組んだ0期生たち。
両者は実験という共通ワードの元で、互いに繋がり補完しあいながら下北沢という街を実験場として「遊ぶと働く」の境界を横断していくための第一歩を踏んだのではないだろうか。
東京都実験区下北沢としても、引き続き「studioYET」の動向を間近から追いつつサポートしていきたい。
※撮影時のみマスクを外しております