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この街で起きた、熱いムーブメントの連鎖。 下北沢で働きたくなる実験イベント「I am working in Shimokitazawa」レポート。

2022年8月1日~5日、実験イベント『I am working in Shimokitazawa』(以下、IWS)が「ミカン下北」のグランドオープンに合わせて開催された。「ようこそ。遊ぶと働くの未完地帯へ。」をコンセプトとする同施設の“働く”の部分をさまざまな切り口で提案したこのイベント。「下北沢で働きたくなる実験」をスローガンに、お揃いのオリジナルTシャツの配布やシークレットライブなど、多彩な催しから、街に一体何が起こったのか? 期間中のレポートとともに、その裏側に迫った。

IWSで行われた多彩な企画

期間中に行われた企画は、以下の通り。すでに終了した企画も多いが、一部は急遽継続することが決まり、長期に渡って楽しめる企画となった。

働く下北Tシャツ配布(終了)

オリジナルTシャツと名刺を交換できる企画。駅前にブースが設置され、配布時刻に連日行列ができるほど盛況だった。(7月28日にオープンした「BROOKLYN ROASTING COMPANY SHIMOKITAZAWA」のコーヒーチケット付き)

シークレットライブ『おつかれフェス』(終了)

「働く下北Tシャツ」着用者限定で参加できるシークレットライブ。下北沢を舞台にしたミュージカル映画「オジキタザワ」出演者によるダンスパフォーマンス、DJやついいちろう(エレキコミック)、hy4_4yh(ハイパーヨーヨ)、ライトガールズ(やついいちろう×Sundayカミデのユニット)による音楽パフォーマンスが行われた。同イベントに合わせて制作されたライトガールズの新曲では、下北沢を舞台にしたPVも制作することに。

 

そしてこのイベントで興味深いのは、そのコンテンツの多くが“下北沢で働きたくなる実験イベント”に共感したプレイヤーたちによって、当初の実施内容に追加されていった企画だったということ。
“実験”の名のもと、一気に拡大していった楽しいコンテンツは以下のとおり。

無料ポートレート撮影(終了)

ミカン下北E街区にオープンしたクリエティブスタジオ「砂箱」にて、Tシャツ着用者限定でポートレートを無料撮影。

 

サントリー謹製『ビアボール』×IWS 特別配信番組(アーカイブ配信中)

・DAY1「下北ランチドラフト~仕事に勝てるローテーション~
下北沢のランチを知り尽くしたプレイヤーたちによるランチドラフト会議。
水口瑛介(アーティファクト法律事務所 代表弁護士)×阿部達哉(株式会社アイラブ(I LOVE 下北沢)取締役)×松下修(株式会社ピルタス 代表取締役)

 

・DAY2「After Work Shimokitazawa」
下北沢で活躍するエンタメプレイヤーたちによる、ちょっとディープな下北談義。
本多愼一郎(本多劇場グループ 総支配人)×石垣エリィ(エリィジャパン 総監督)×中西雷人(俳優)

 

下北沢が舞台の映画『オジキタザワ』メンバーによるシークレットバー@BROOKLYN ROASTING COMPANY SHIMOKITAZAWA(終了)

Tシャツ着用者限定で、“公式おつかれドリンク”サントリー謹製「ビアボール」を提供。

『オジキタザワ』×IWS スペシャルコラボ(下北沢駅前デジタルサイネージで放映中)

『オジキタザワ』と本イベントがスペシャルコラボ。急遽深夜の京王井の頭線下北沢駅で撮影した動画が駅前のデジタルサイネージで特別上映中。

下北沢で働く人の選書コーナー(開催中)

「ミカン下北」A街区「TSUTAYA BOOKSTORE」3階草叢BOOKSコーナーにて、下北沢で働くプレイヤーの選書コーナーを設置。

求人募集コーナー(8月末まで)

急遽イベント期間中に生まれた企画。イベント終了後には場所を変えて「TSUTAYA BOOKSTORE」前に、自由に掲出できる求人募集のボード設置スタート。下北沢の求人募集情報をチェック&告知できる場が生まれた。

おそろいのTシャツが生み出した一体感

数々の企画の中でも特筆すべきなのが、「働く下北Tシャツ」の配布だ。期間中、下北沢のあちこちでこのTシャツを着ている人を見かけた。ふらっと立ち寄ったお店の店員さん、雑踏のすき間から見えた通行人……。普段は交わることのない人でも、同じTシャツを着ているだけで“同じ場所で働く仲間”感があるから不思議だ。

 

※撮影時のみマスクを外しています

「#下北沢で働きたくなる実験」でTwitterを検索すると、本企画に関連する感想をいくつか見ることができる。そこでも、「着ている人を見かけると、知らない人でもハイタッチしたくなる一体感があった」などのコメントがあった。

また、「ミカン下北」内のシェアオフィス「SYCL by KEIO」のあるスタッフは、“Tシャツを着ている人と一緒に写真を撮る”自主企画を実施。オフィスのメンバーや「ミカン下北」内店舗の店員など、Tシャツを着ている人に声をかけて撮影し、自身のFacebookで発信していた。そこに写るのは、普段は出会うはずのない、異なる職業の人々。ただ、“同じ下北沢で働いている”という共通点がある。おそろいのTシャツを着ることでそれが可視化され、不思議な一体感を生み出しているのだ。

「働く下北Tシャツ」は、期間中に合計1700枚を配布している。Tシャツを受け取った人の職種は、会社員・フリーランス・飲食店店員・学生(アルバイト)・美容師……など多岐に渡り、中には舞台俳優やミュージシャン、旅人など、この街ならではの肩書きの方も。この多様性が、雑多なカルチャーを持つ下北沢らしい。

拡大するIWSの輪

IWS最終日の8月5日には、シークレットライブ『おつかれフェス』が下北沢のワークプレイス「下北ワープ」で開催された。Tシャツを着ている人だけが参加できる限定イベントで、当日は多くの人々が会場に集まった。下北沢が舞台のミュージカル映画『オジキタザワ』出演者によるオープニングアクトにはじまり、DJやついいちろう、hy4_4yh、ライトガールズによるパフォーマンスがノンストップで続いた。観客は音楽に乗せて身体を揺らし、会場はライブハウスのような盛り上がりで、ここが働く場所であることを忘れてしまうほど。

終了後に参加者に話を聞くと、「こんなに体を動かすとは思わなかった!出演者のパフォーマンスに、下北沢で働く人が一体になったのが見えたイベントだった」とのこと。IWS期間に通じるキーワードは「一体感」なのかもしれない。そして実は、『おつかれフェス』には嬉しい裏話がある。

当初『おつかれフェス』の出演者は、DJやついいちろう&ライトガールズのみを予定していた。ところが、イベント準備を進めるうちにどんどん企画が拡大。 “下北沢愛好家”として活動する俳優・石垣エリィがIWSの試みに「面白い!」と賛同したことを発端に、彼女も出演している映画『オジキタザワ』メンバーの出演が決定したのだった。

※公演時のみマスクを外しています

またhy4_4yhの出演 は、4月2日・3日に行われた『未完祭』の繋がりがきっかけとなっている。『未完祭』は「ミカン下北」の開業イベントで、hy4_4yhは複数のプログラムに参加。イベント後も繋がりは続き、IWSの企画趣旨に賛同。土壇場でスケジュールを調整し、サプライズで出演することとなった。

そして『おつかれフェス』終盤にはライトガールズによるIWSオリジナル曲『SHARE』が披露された。それだけでなく、フェスの様子がPVの中で紹介されるという。実はこのオリジナル曲、やついからの提案で生まれたもの。打ち合わせでIWSのコンセプトを説明したところ、「せっかくならもっと面白い展開に」とオリジナル曲とPV制作の提案があったのだ。

『SHARE』に込めた想いを問うと、

やつい「今はなんでも所有ではなく“シェア”しようと思っているので、その気持ちを歌にした」

Sundayカミデ「たくさんの生き方や選択肢、それぞれの自由や正義を考えるときに、そもそも僕たちは“シェア”しながらこの地球で生きていることをあらためて大切にしようという思いで制作した」

とそれぞれコメントをくれた。
このPVは9月に完成予定。公開が楽しみだ。

変化を続ける下北沢で

「おつかれフェス」参加者に下北沢の魅力を聞くと、複数の人から「よそ者でも優しく迎えてくれるところ」という回答があった。演劇や音楽といったエンタメ分野はもちろん、グルメや古着など、下北沢にはたくさんのカルチャーが入り混じっている。住まう人、働く人、遊ぶ人……それぞれを柔軟に受け入れて変化していく間口の広さは、下北沢が持つ大きな魅力だ。

IWSオリジナル曲『SHARE』には、こんな歌詞がある。

街の風景はずっと

僕らの共有location

いつの間にやら時代がひっくり返っても

僕らshare!

下北沢の街は、変化を続けている。特にここ数年の変化はすさまじく、駅前を中心に数年前とはまったく異なる風景が生まれている。でも、“古き良き下北沢”は失われていない。様々なカルチャーが雑多に混じり合い、新しい出会いや価値観が生まれ、やがて別の風景に変わっていく……その“変化”こそが、「下北沢」なのだろう。

 

最後に、「#下北沢で働きたくなる実験」でSNSに投稿されたコメントを紹介したい。

友達でもない、会社の人でもない、ただみんな仕事を楽しみ、周りの人の仕事も理解し応援する関係性。
このコミュニティーが居心地が良いのです。

※撮影時のみマスクを外しています

https://www.instagram.com/p/Cg4BYfvLIV1/

 

IWSが仕掛けた「おそろいのTシャツを着る」というシンプルな企画を皮切りに、「下北沢で働く」を軸にした小さなムーブメントが起きた。このコメントは、一連の取り組みが示した「下北沢で働く」イメージそのものではないだろうか。雑多なカルチャーがひしめき合う下北沢では、多種多様な人がそれぞれの働き方をしている。干渉し過ぎず、ときに協力し合い、“下北沢”というゆるやかな共通項で繋がる人々。これからこの地がどう変化して、どんな出会いがあって、どんなカルチャーが生まれるのか。下北沢で働く一員として、内側から見つめていきたいと思う。

Information

取材・文:堀越愛/撮影:大杉明彦 (一部編集部撮影)
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