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「シモキタ音頭」が響く夏。来場者7万人の夏の風物詩『下北沢盆踊り』と街のつながり|下北沢盆踊り×下北緑日【前編】

夏の下北沢に、今年もあの太鼓の音が響き渡る。昨夏に2日間で約7万人を動員した『下北沢盆踊り』と『下北緑日(えんにち)』が、2026年7月25日(土)・26日(日)に開催。毎年大いに盛り上がりを見せるお祭りだが、その裏を支えているのが、まさに「縁の下の力持ち」である運営チームだ。今回は『下北沢盆踊り』と『下北緑日(えんにち)』を長年支えてきたキーパーソンたちを迎え、座談会を実施した。

下北沢盆踊り(2025年)の様子 ©naoe

登場人物

長沼洋一郎さん(しもきた商店街振興組合理事長) 池ノ上育ちの生粋の下北沢人。2020年ごろから盆踊りの実行委員会に加わり、現在はオブザーバーとしてお祭りを見守る。
金子健太郎さん(あずま通り商店街顧問) 「金子ボクシングジム」会長として知られる。あずま通り商店街の会長を15年務め、現在は顧問として活動。
下平憲治さん(あずま通り商店街副会長) 「せたがや音楽プロジェクト」理事長も務め、2014年に「シモキタ音頭グランプリ」を主催した。
気仙秀悦さん(あずま通り商店街副会長) 建築を本業とし、お祭りのやぐら製作を職人仲間とともに担う。
櫻井孝佑さん(株式会社あおとき代表) 「遊び心で社会を彩る」をコンセプトにイベント企画などを手がける。『下北緑日』のプロデューサー/クリエイティブディレクター。
立道朱香さん(株式会社あおとき) 『下北緑日』の運営チームとして、出店者やボランティアとの調整、当日設営を担う。

L→R:下平憲治さん、気仙秀悦さん、金子健太郎さん、長沼洋一郎さん

L→R:立道朱香さん、櫻井孝佑さん(株式会社あおとき)

「汗」と「冷や汗」から始まった盆踊り

―『下北沢盆踊り』はどのようにして始まったのでしょうか?

金子:2017年までは『下北沢夏祭り』という名前だったんですよ。2010年ごろまでの下北沢はお盆になると閑古鳥が鳴いていて。どうにか8月にも人を呼べないかという声に応えて盆踊りを始めました。ノウハウがないものですから、提灯ひとつ池ノ上の人たちから借りるほどで(笑)。200人や300人くらいの小さなお祭りから始まり、気仙さんたちにやぐらを手伝ってもらいながら、なんとか形にしました。

気仙:商店街の会費を使って行う以上、下北沢の知名度を上げて実際の集客につなげないといけない。予算が決められた中でボランティアの力を借り、運営側も積極的に現場に出ました。汗も冷や汗も、相当かきましたよ(笑)。あの時期は小田急線の地下化前で街が大きく変わっていたこともあって、誰もが馴染みのある盆踊りという催しが有効だろうと。お神輿は装束を揃えるなどハードルが高いですが、盆踊りは手ぶらで来ても参加できますから。

―そのあと『下北沢盆踊り』が始まったのですね。

金子:「縁日は北澤八幡神社で行われるから盆踊りに集中したい」という意見もあって、それが『下北沢盆踊り』の始まりです。盆踊りで人を集める以上、子どもが楽しめる要素も必要ということで取り入れたのが「かえっこバザール」。いらないおもちゃを持ってきてポイントに換え、別のおもちゃを選んだり、お手伝いでポイントをもらったりできる仕組みです。地域を巻き込むときは公共性があると進行しやすいという事情もあります。

下北沢盆踊り(2025年)の様子 ©naoe

まちに縁のある方々とのコラボレーションによってバージョンアップ

―今では下北沢盆踊りには欠かせない、「シモキタ音頭」について教えてください。

下平:きっかけは「シモキタ音頭グランプリ」を行ったことです。「マツケンサンバ」の振り付け師・真島茂樹さんや、作曲の宮川彬良さんのような世田谷区に縁のある方にもご協力いただきました。全国から41曲が集まり、30人の選考委員会による審査を経て、全会一致で選ばれたのが「シモキタ音頭」です。「いろんな事が変わってく いろんなあの頃が増えていく」という歌詞は、この街の空気そのものだと思いますね。今では口ずさみながら来てくれる方もいるほど浸透しています。

気仙:盆踊りは誰でも踊れる気軽さが魅力ですが、オリジナルの楽曲で下北沢にしかない独自性も生まれる。さまざまなコラボレーションによってバージョンアップしていけるのが、このお祭りの面白さだと思います。

下北沢盆踊り(2025年)の様子 ©naoe

今も昔もシモキタの華。それぞれが語るお祭りの思い出

―下北沢のお祭りの思い出を教えてください。

下平:2015年に歌手のジェロさんが「シモキタ音頭」を歌ってくれた時ですね。真島茂樹さんがその隣で踊ってくれて、信じられないような光景でした。

金子:幼少期に経験した北澤八幡神社のお祭りが忘れられません。神輿を担ぐと冷えた二十世紀梨と銭湯のチケットがもらえて。今の「バーミヤン」があるエリアから北澤八幡神社まで何百軒も露店が並んでいましたよ。

気仙:あずま通り商店街では『下北夜市』をやっていました。大人がお酒を飲みながら射的や金魚すくいで遊ぶという。「子どもから大人まで楽しめる」という今に通じる視点は、あの経験から生まれましたね。

長沼:北澤八幡神社の縁日には山車を引いてお菓子をもらったり、神輿担いで梨をもらったりと。複数の「睦」に所属しながら、お祭りという一つの目標に向かって侃々諤々と言い合いながら汗を流していく。「来年はもっと良くなるだろう」という共通認識が連帯を強めてくれるんですよね。

櫻井:私は下北沢に移り住んで10年ほどになりますが、週末に子どもと歩くと必ずどこかでイベントがあって、そこで友達が増えていくんです。『下北緑日』でも「SHIMOLAB」で子どもが追いかけっこをしている横で親が楽しくお酒を飲んでいる光景があって。そういった環境がいい刺激になっていると感じますね。

立道:北澤八幡神社のお祭りはお客さんとして毎年通っていました。下北緑日を運営する側になった今は知り合いも増え、楽しみ方が格段に深まりましたね。

下北沢盆踊りスタッフのTシャツ(2025年) ©naoe

高まり続ける祭りの熱気と、新たな課題

―2025年の『下北沢盆踊り』と『下北緑日』のコラボを振り返って、感想を教えてください。

櫻井:もともと『下北緑日』は「あおとき」の周年記念の恩返しとして2024年に始まりました。コラボレーションを通して、ミカン下北を会場にできたことは、特に嬉しかったですね。ただ、人を巻き込む難しさも改めて実感しました。

長沼:見ていて、彼は本当に頑張っていましたよ。「商店街開催であれば楽だよ」と伝えても、「できるだけ自力でやります」と。あくまで恩返しにこだわっていましたね。

下平:想像以上の人が集まって、下北沢全体を代表するお祭りになった手応えがありますね。街の人がさまざまな形でまとまってワイワイガヤガヤする、まさに望んでいた光景でした。

長沼:1日目がカンカン照りで2日目が土砂降り。2日目も晴れていたら10万人来ていたでしょう。無事成功に終わったからこそ言えるのですが、この規模になると商店街の備品を持ち寄るやり方には限界も見えてきた。安全面も含めてより真剣に考えていく必要があります。

金子:商店街の底力を感じた一方で、「事故がなくてよかった」で終わらず、リスクの部分をしっかり見つめ直すことが大切だと感じています。ボランティアスタッフは会社員が多いにもかかわらず毎週集まってくれる。その熱量は本当に相当なものですが、新しいやり方も模索していきたいですね。

「このために来たんだよ」。街に息づくお祭りへの愛

―印象に残った反響を教えてください。

気仙:「来てよかったね」と言いながら踊っている人の姿はとても印象的でした。駅前のステージで踊ることのスペシャル感を感じてもらえているんだなと。

金子:下北沢在住の外国人の方が、落ち込んでいた時にコインランドリーへ行ったら太鼓の音が聞こえてきて。駅前で踊る人たちの姿に活力をもらえたというエピソードは嬉しかったですね。もう一つ、5歳くらいの子どもに20代のお母さんが「お母さんはこのシモキタ音頭のために来たんだよ」と話している動画を見せてもらって。感慨深い光景でしたね。

立道:ボランティアスタッフを募集したら30人ほど集まってくれて。皆さん本当に温かくて、下北沢への愛でこのお祭りが成り立っているんだと改めて感じました。

下北沢盆踊り(2025年)の様子 ©naoe

さらに多様性と「愛」のある夏へ

―2026年に向けての展望をお聞かせください。

下平:下北緑日チームには新しいことにどんどん挑戦してほしい。「下北沢でこれをやったら面白い」と話し合える人がたくさん集まれば、盆踊りに新たな価値が次々と生まれていくと思います。

気仙:マネタイズの方法も含めた抜本的な見直しをしながら、より良いイベントにしていきたいですね。

金子:ボクシングのプロモーターとして興行を作り上げてきた経験と、盆踊りの運営は通じるものがあります。それぞれの専門家が知見を持ち寄って、さらに充実したイベントを育てていきたいですね。

長沼:下北沢の良さは「愛」、もっと言えば偏愛だと思っていて。こだわりを持った人たちが受け入れられる器がある。アイドルが衣装を着て普通に歩いていて、誰もそれを否定しない。そんな街を象徴するのが『下北沢盆踊り』ですから、これからも多様性のあるお祭りを続けていきたいですね。

立道:2025年の下北緑日でお客さんが喜ぶ姿を間近で見られたのが嬉しかったので、今年はより規模を大きくして、下北沢全体を盛り上げていきたいです。

積み重ねてきた歴史の先に、新たな挑戦が待っている。運営チームに迫る上で欠かせないのが、昨年から新たに誕生した実行委員長の存在だ。これまで商店街の役員が脈々と担ってきたその座に、約11年間にわたりボランティアとしてお祭りを支え続けてきた新井川敦さんが就任した。「ボランティアから実行委員長へ」という実験的ともいえる運営スタイルには、どんな背景があったのか。後編でお届けする。

 

▶︎初のボランティア出身実行委員長が誕生…誰もがフラットに関われる祭りの新挑戦|下北沢盆踊り×下北縁日|記事後編はこちら


Information

取材・文:山梨 幸輝  撮影:YUKI KAWASHIMA
下北沢盆踊り2026
下北沢盆踊り2026
日時:2026年7月25日(土)・26日(日)
開場 13:00〜(露店オープン)
開演 14:00〜(ステージオープン)
盆踊り16:00〜20:00

場所:下北沢東口駅前広場
主催:しもきた商店街振興組合、下北沢東会(あずま通り商店街)、下北沢南口商店街振興組合
後援:世田谷区 公益財団法人世田谷区産業振興公社、世田谷まちなか観光交流協会
お問い合わせ:下北沢盆踊り実行委員会事務局
下北縁日2026
下北縁日2026
日時:2026年7月25日(土)・26日(日)13:00〜19:00
場所:ミカン下北、マスタードホテル、SHIMOLAB.、代沢通り(歩行者天国)
主催:下北緑日実行委員会
後援:世田谷区/世田谷区産業振興公社
企画運営:株式会社あおとき
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