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券売機で “アート”が買えるグルメバーガーショップ?! 「Island Burgers」の新たな実験。

四谷三丁目からスタートし、高田馬場、市ヶ谷に次いで、今回下北沢に新店をオープンする「Island Burgers」。まるで“島”のような、ヤシの木のピックがトレードマークの手作りグルメバーガーは、パティを冷凍保存しないというこだわりがあり、そのジューシーさやボリュームが人気の秘訣だ。今回は、ミカン下北に出店する経緯や思い、新店舗で試みる“新たな実験”について、オーナーの高木耕一さんに聞いた。

街を盛り上げたいという思いに心動かされた、下北沢への出店

Island Burgersはどんな経緯で創業されたのでしょうか?

店の創業は2013年なんですが、僕がIsland Burgersに携わっているのは2018年からです。もともと串焼き居酒屋を創業して今も何店舗か展開していますが、他の業態にも拡大したいと考えていたときに、ここのオーナーが「引退を考えているから引き継がないか」と声をかけてもらったのがきっかけでした。そのときは四谷三丁目店の一店舗だけだったのですが、人気もあったし常連さんもいたので、そんなお店がなくなるのはもったいないという思いもあり、引き継ぐことにしました。

高木さんがオーナーを引き継がれてから事業を拡大されているんですね。

2020年に高田馬場店、2021年に市ヶ谷店を出店、次の下北沢店で4店舗目になります。下北沢は、2020年の段階で出店を決めていたのですが、2年越しの実現となりました。

Island Burgers一番人気のベーコンエッグチーズバーガー(画像提供:Island Burgers)

下北沢にはどんなイメージがありますか?

学生時代はレコードを探しにきましたし、井の頭線沿線に住んでいたこともあるので馴染みもあり、面白い若者が集まるディープな街という印象です。個人的に好きな雰囲気ではありますが、飲食店ビジネスの側面からみると難しい街だと感じる部分もあります。特に今回は初めての商業施設出店ですし、これはひとつの挑戦だと思っています。

その挑戦を決めたきっかけはなんだったのでしょう?

京王電鉄さんとのやりとりでしょうか。彼らと話したときにすごく熱量を感じて、直感的にこの人たちとやっていきたいと思ったんです。実際にどんな店にするかの打ち合わせも密にやってきましたし、「各店舗の成功が、延いては街の盛り上がりに繋がるから一緒に頑張っていきましょう」という、テナントに寄り添う言葉が会話の端々にあって。そういう思いって滲み出るものじゃないですか?ああこの人たち本気で言ってるんだなと思って、彼らの姿勢に惹かれましたね。また、下北沢駅周辺は京王電鉄だけでなく、小田急電鉄、世田谷区も開発していて、3者がそれぞれ切磋琢磨して街を盛り上げようとするスキームに期待が持てたということも出店を決めた理由のひとつです。

自動券売機でアートが買える飲食店?

初の商業施設出店や、下北沢という立地を考え、他の3店舗と違う工夫も何か考えていらっしゃいますか?

今までと同じことだけをしていたら成功は難しく、グルメバーガーの提供以外で付加価値を感じてもらえる空間を作りたいと考え、下北沢店ではアートに関する取り組みをいろいろと考えています。店内の内装もアートが展示できるように、あえて白壁にして、作品を飾れるレールなども準備しているんです。ここで、アーティストが展示・販売できる仕組みにしたいと考えています。

他の飲食店を巡ることでアイデアが浮かぶことも多いと話す高木さん

バーガーショップで“アート”とは珍しい!もう少し詳しく聞かせてください。

僕自身アートが好きなんですが、アメリカに住む親戚のアートとの触れ合い方が日本と圧倒的に違うなということを感じたことがあって。アメリカでは子どもを連れて美術館などを回るなど、日本よりもアートに触れる機会が多く、多くの人にとってアートが身近な存在です。中でも特に違うのは“アートを買う”という行為のハードルの低さ。日本ではアートを買うことがとても高尚なことに感じられますが、そのアメリカの親戚は普通に絵やアート、パフォーマーに対して自分の収入の一部を使っていたりして。そういう人たちが多ければアーティストを応援・育成することになりますし、文化の醸成にもなりそうです。ちょっと話が逸れますが、韓国のK-POPって国がバックアップして一大産業として成長したでしょう?アートやエンタメに投資することが経済を刺激して、国全体を元気にすることにもつながるんじゃないかなと思ってるんですよね。

対して日本はアートが好きな人、もしくは目的がある人でないとなかなか美術館に足を運ばないのが現実。ならば、もっと気軽に街中でアートに触れられたり買えたりできる場所があればいいんじゃないかという考えです。

ニューヨークのグッゲンハイム美術館にて(画像提供:高木さん)

店舗でのアートの取り入れ方はすでにイメージされていますか?

下北沢店は非接触のサービスを行うために自動券売機を置くのですが、その券売機のメニューボタンに、アートの販売メニューも載せようかと。ハンバーガーメニュー、ドリンクメニューの並びに、「アートメニュー」も作って、ボタンを押したらアートが買える、という仕組みを作ったらおもしろいかなと思っています。

例えば、1,000円台のセットメニューが並ぶ中、タッチパネルに急に300,000円のアートメニューが出てきたら「え?!なに?」となりますよね(笑)。まずそこで興味を惹いて、そのボタンにアートが飾られている場所を入れておくことで、「あ、あのアートには300,000円の価値があるんだ」と知ってもらうことができるし、アートは誰でも買えるものだということを知ってもらえるきっかけになるかな、と。それで時々本当に売れちゃったりしたらそれはそれで嬉しいことだし。

日本ではアートに触れる機会があまりないから、存在自体が“難しくてよくわからないもの”になってしまっているんですよね。だから手も出ないし、買うという発想も生まれない。だったら触れられる場所を作ることで、日本のアートに対する価値観を変えていければいいなと思っているんです。

市ヶ谷店には、UCEASTさんのペインティングが。白壁に直接描いてもらったそう。

なるほど、おもしろい!飲食店であれば、アートに興味がなくても、ごく自然に触れることができますね。

太陽の塔などを作られた岡本太郎さんは、絵画や彫刻で著名になられましたが、実は一般的に販売されるような家具や照明、食器などにいたるまで暮らしの中に登場するプロダクトのデザインも手がけていたと聞きました。これこそ日々の生活の中にアートが存在する事例だと思っていて、まずは小さい活動ではありますが、僕も自分の店でそういった取り組みをしてみたいなと。飲食店がインターフェイスになって、少しずつでも文化が変わったらおもしろいですよね。

下北沢店のイメージ(画像提供:Island Burgers)

飲食店から始まる新たな文化醸成がとてもたのしみです。

小さな飲食店での取り組みですが、日本のアーティストの育成に少しでも寄与できたらうれしいですし、いつかは海外のアーティストもここで展示したい、となるまで価値をあげていきたいですね。

「食べておいしい」の飲食店の価値は今、すでに当たり前になっています。だから「食べる×○○(何か)」を生み出したいというのが僕の考えで、今回はその“なにか”の部分が「アート」なんです。“おいしいプラスα”の付加価値がたくさんあるお店へと育てていき、店舗も街も盛り上げていければと思います。

Information

取材・文:古田啓 / 撮影:岡村大輔
Island Burgers アイランド・バーガーズ(グルメバーガー)
Island Burgers アイランド・バーガーズ(グルメバーガー)
D街区1F
一口かぶりついた瞬間に感じる「肉の旨味」を存分に味わえるグルメバーガー店。牛肉100%のパティは冷凍保存せず、生の牛肉を毎日手作業で一つずつ作るこだわりで、天然酒種酵母仕込みのバンズとも相性良し。仕上げにもちもちバンズをカリッと表面だけ焼くスタイルで提供される、本気の一品をどうぞ。
Web
https://islandburgers.jp/
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