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下北沢の街で、ファッションショーを。yutoriが仕掛けた「ミカン下北×ファッション」の実験。

2023年4月14日(金)、ミカン下北の通路をランウェイに見立てた異色のファッションショー『YZ SHIMOKITA COLLECTION』が開催された。これは、複数のストリートブランドを展開する株式会社yutoriとミカン下北の共催イベントである。下北沢にオフィスを構えるyutoriの「ファッションカルチャーの根付く下北沢を盛り上げたい」という想いを発端に開催された、本イベントをレポートする。

街を舞台にしたファッションショーの構想

『YZ SHIMOKITA COLLECTION』の構想が生まれたのは、2022年秋。『東京都実験区下北沢』による、yutori代表・片石貴展さんへのインタビューがきっかけだった。

(※参考記事:「“カルチャーの匂いのする大衆性”を期待できる街・下北沢でyutoriが見据える将来とは?」)

インタビュー終盤、片石さんは「誰かと何かをやるのに相応しいフェーズに入った」と語った。それまでは洋服という特定分野を深く掘るような取り組みがメインだったyutoriだが、徐々に各ブランドの知名度が上がってきた。アパレルの知見や実績が明確になったので、次は「もう少しオープンに人や他社を巻き込んで何かをやってみたい」というのだ。

ここで片石さんから飛び出たアイディアが、「街を舞台にしたファッションショー」。2022年8月、下北沢にオフィスを移転したyutoriは「ファッションカルチャーの根付く下北沢を盛り上げたい」という想いを抱くようになった。この想いに京王電鉄株式会社が賛同したことから、『YZ SHIMOKITA COLLECTION』の実現に繋がったという。

イベントのメインビジュアル

この日のミカン下北にはyutoriブランドに関わるモデルや関係者がたくさん訪れていた(編集部撮影)

ミカン下北がランウェイに

ショー本番の4月14日。会場となったミカン下北・A街区2階中通路は、普段とはまったく異なる雰囲気をまとっていた。天井には、Y・Zを模した風船が配置されている。これはyutoriが運営するECサイト「YZ STORE」をイメージしたものだ。

また、ランチ営業を終えた各飲食店たちは照明を落とし、一時的に店じまい。普段とは異なる様子に、店のスタッフたちもソワソワとした面持ちでランウェイを見つめていた。

ショーには「YZ STORE」で展開されているブランドのうち全11ブランドの2023年春夏コレクションが登場。

《出演ブランド》
9090
Younger Song
Wudge Boy
genzai
centimeter
BALLSY.BROTHERS
BADWAY
My Sugar Babe
HTH
Student Apathy
BLESS Ü

「YZ STORE」の中でも、特に若い世代から支持を集めている注目ブランドが登場。それぞれ3ルックずつ、計33ルックが披露された。

ショーの中盤には、5人組アーティストグループ「KOMOREBI」による音楽パフォーマンスも開催。ランウェイをステージに、迫力のパフォーマンスを披露。観客だけでなくモデルたちも盛り上がり、派手な照明に包まれながら約20分のファッションショーは幕を閉じた。

ファッションショーを終え、次に向かうのは

実は、今回のショーに片石さんはほとんど関わっていない。アイディアこそ片石さん発信だが、ショー自体はyutoriの若手リーダー陣が作り上げたという。

中心メンバーである村中さんによると、ショーを作り上げるにあたり意識したのは「yutoriらしさ」。いわく、「好きなことを好きな人と、とことんやる」ことだという。

例えば、ランウェイに登場したモデルたちは、このショーのためだけにキャスティングされたわけではない。普段からyutoriブランドのモデルを務める、馴染みのメンバーが集ったのだという。また、ヘアメイクなども関係値のあるスタッフが集まった。つまり、ショーはyutoriの”らしさ”を活かしたメンバーで構成されたのである。

また、演出でこだわったのは「下北沢で多様なファッションを楽しむ等身大の若者たちの姿を映し出した、日常と非日常の中間のような雰囲気」。まさに、ランウェイを歩くモデルたちは今にも下北沢の街に出かけていきそうな足取りをしている。一方でショーならではの光や音楽の演出に包まれ、”日常と非日常の中間”を醸し出していた。

初の試みとなるファッションショーを終え、村中さんは「ショーの冒頭、会場がライトアップされた瞬間のワクワクした空気は忘れられない」と振り返る。開催決定後、「いいね!」と賛同してくれたすべての人が一丸となり、生まれたパワーに大きな驚きと感動を感じたという。

最後に、yutoriとして次に仕掛けたい「実験」の展望を聞いた。返ってきたのは、「互いに密接な関係である“ファッション×音楽”のイベント」を開催したいという言葉。下北沢に根付く代表的カルチャー「ファッションと音楽」の融合イベントが行われるのも、そう遠い未来ではないかもしれない。

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取材・構成:堀越愛
Jikken*Pickup_