2025年3月28日(金)~30日(日)、ミカン下北の開業3周年を記念したイベント「ミカンワンダープラネット」が開催された。
ミカン下北は“新しい挑戦や実験を応援する場”として、下北沢の街で「やってみたい」という想いを持つさまざまな企業・団体・個人とともに取り組みを重ねながら、進化を遂げてきた。これまで数多くの実験的なイベントを実施してきたからこそ、チャレンジングな企画が自然と生まれ、互いにサポートし合うコミュニティが育まれている。
その集大成のひとつともいえる本イベントでは、学生、下北沢で働くワーカー、地域の団体など、街に関わるさまざまなプレイヤーたちが主催者となり、ミカン下北の通路や店舗、壁面など、あらゆる空間を最大限に活用。3日間にわたり、さまざまな“実験”が繰り広げられた。
本記事では、その中からいくつかの企画をピックアップして紹介する。
街ゆく人を巻き込んで、古着の早重ね着を競い合う「古着んピック2025」
下北沢ならではのユニークな企画として実施されたのが、「古着んピック2025」。1分間でどれだけ多くの古着を重ね着できるかを競い、賞品としても古着を受け取れるという、古着づくしのイベントだ。主催は、ミカン下北内のワークプレイス「SYCL by KEIO」の会員でもある「あたらしいチーム」のメンバー。
参加者は街を歩く人々。競技の開始時間が近づくと、徐々に競技参加者が集まり、最終的には定員となる18名が「古着んピック2025」に挑戦した。友人同士で参加する若者から、1人で挑戦する人、家族での参加など、幅広い参加者が集まった。
簡単そうに見えて意外と難しい古着の重ね着。かぶるだけで着られるTシャツを中心に選んだり、細身な体型を活かしてタイトなカットソーから挑戦したり、動きを少なくするためにしゃがんで服を選んだりと、参加者それぞれの工夫が面白い。
参加者は、順位に関わらず、競技中に着用できた古着を1枚持ち帰ることもできる。山積みの古着の中からお気に入りの1枚を見つけようと、奮闘する姿も見られた。
優勝者は、7枚の重ね着に成功した女性。「想像よりも難しかったけれど、夢中になって参加していたら7枚も着れました」と語る。この女性は、3人の息子さんと一緒に家族で参加していた。休日に下北沢に遊びに来たところ、「古着んピック2025」の会場前を通りかかり、参加することになったそう。子どもたちも「楽しかった」と口々に語った。
ミカン下北の飲食店内で始まる「いきなり10分劇場」
もう一つ、ミカン下北らしいユニークな企画が実施された。それが、演劇ユニット「PANCETTA」による「いきなり10分劇場」。ミカン下北内の飲食店を舞台に、急に演劇が始まるという企画だ。
3月30日、「韓国食堂&韓甘味ハヌリ」「ダパイダン105」の2店舗にて、計4回の公演が実施された。
店内のお客さんは、普通に食事を楽しみに来た方がほとんど。食事をしていると、いきなり音楽が流れ始め「PANCETTA」のメンバーたちによる演劇が始まるのだ。「PANCETTA」メンバーたちは、LEDを普及させるアイドル「LEDY」という設定でフラッシュモブ風に、お客さんを巻き込み、歌やトークで場を盛り上げた。
突然のことに最初は困惑した様子を見せるお客さんも、徐々に笑顔に変わっていく様子が印象的。歌に合わせ、手拍子をし、最後には大きな拍手で送り出すお客さんが多く見られた。
実は「PANCETTA」メンバーにとっても、このような形で演技をすることはほとんどないという。公演直後のメンバーからはこんな声が寄せられた。
「最初は私たちも飲食店の中でやると聞いた時は驚きました。でも、実際にやってみたらなんとかなるんだなと感じています(笑)。お店の方々もお客さんも急に始まった演劇を受け入れてくださって、下北沢という街の懐の深さをひしひしと実感します」
学生メンバー主体のリメイクファッションショー「Re:mix street produced by あらとぅ」
3月28日の夕方、ミカン下北A地区の通路には赤いカーペットが敷かれ、いつもと違った雰囲気に。この日開催されたのは、「ファッション×社会問題」をテーマに活動する学生団体「Innovation Around 20」によるファッションショーだ。
このファッションショーでは、ミカン下北内で株式会社FASHION Xが設置する古着回収BOXから回収された古着をリメイクした衣装や、ミカン下北でポップアップを実施しているリメイク古着店「SHINKIRO」のアイテムなどが用いられた。
ショーの企画から演出、衣装のリメイク、モデル、DJ、カメラマンに至るまですべて学生の手で作り上げた。
ミカン下北では過去にもファッションショーを開催したことがあり、今回が2回目の開催となる。前回は、下北沢にオフィスを構える株式会社yutoriによるショーであったが、今回は、学生たちの手がけるショー。より一層、実験的な取り組みとなった。実験区下北沢では本プロジェクトの背景を、運営メンバーへのインタビューとともにレポートしているので、ぜひこちらもチェックしてほしい。
街中での音楽ライブ「MIKAN SHIMOKIA アニバーサリーライブ」
さらに3月28日(金)、29日(土)には「MIKAN SHIMOKIA アニバーサリーライブ」が開催。主催は、アーティストとライブハウスのマッチングプラットフォーム「ONSTAGE」だ。”いつでもすぐそこにステージのある世界を”というビジョンのもと、ミカン下北の通路や飲食店内にてアーティストによるライブパフォーマンスが展開された。
ライブの会場となったのは、A街区の中通路や下北六角前エリア、チョップスティックス(A街区2階)など、施設内の複数のロケーション。来場者は、買い物や食事を楽しむ日常の延長で、思いがけず音楽と出会う体験を楽しんだ。
ONSTAGEは、ライブハウスの枠を超えて街に音楽を届ける新しい形の取り組みをこれまでにもミカン下北で展開しており、今回の企画もその一環。多様な空間を活用することで、音楽と日常が自然に交差する新たな試みとなった。訪れた人々にとって、日常の中にある”実験”として鮮やかな印象を残した。
▼参考記事:
街や店が音楽ライブのステージに—ONSTAGE仕掛ける『下北沢ミュージックフェア』
街行く人の手で完成させられる壁面アート「CRIATIVE WALL」
ミカン下北・図書館カウンター下北沢の向いの壁面にライブペイントが施され、総じてこれまでの実験的な企画が集結したにぎやかな3日間となった。
プロの手によって日に日に色付けられていく壁面は、期間中に一般の方がペイントに参加できる時間もあり、海外からの観光客の方々がペイントを体験する姿も見られた。

初日28日の様子
ミカン下北を舞台に、同時進行で複数のイベントが開催された「ミカンワンダープラネット」。施設内のお店だけではなく、外部のプレイヤーやお客さんまで巻き込んで、たくさんの実験が行われた。その様子は、今後さらなるコラボレーションが生まれていくことを予感させる。4年目となるミカン下北がさらなる実験の舞台として進化していくことに期待だ。