ミカン下北の開業4周年を祝うべく、「実験中展 -立入解禁-」と題したイベントが、2026年3月20日(金・祝)〜30日(月)の11日間、下北沢にて開催された。
京王井の頭線高架下に位置するミカン下北は、古着屋や多国籍な飲食店など20以上の店舗が集う商業エリアと、開放感のあるワークプレイスから構成される複合施設。多種多様なカルチャーが混ざり合い変化を続ける、常に“ミカン(未完)”な下北沢で「新しい挑戦や実験を応援する場」として、これまで進化を遂げてきた。そんなミカン下北を象徴するような本イベントは、思わず立ち止まって参加したくなる非日常的な“実験”で溢れていた。その様子を、前後編に分けてレポートする。
巨大「実験中」テープがお出迎え
「実験中展 -立入解禁-」の中でひときわ目を引く巨大テープを模したアイキャッチオブジェ。本イベントは、“立入禁止の工事中ゾーン”のモチーフさながら、“立入解禁中の実験中ゾーン”を視覚的に表現していた。
イベント開始日にはあえて装飾が“未完成”な状態でスタート。コンセプトを表す「UNDER EXPERIMENTATION 実験中」と書かれたテープ装飾が施設内に日に日に増え、変化する「装飾中」な空間となった。イベントの製作過程にも-立入解禁-できる仕組みだ。
さらに、フォトブースとしても楽しめるようにと願いが込められ、オブジェとともに設置されていたハンモック。実際に乗ってみたり、スマートフォンで写真に収めてみたりと、子どもから若者、お年寄りまで、絶えず人々が行き交い賑わいをみせていた。


コンセプトを表す「UNDER EXPERIMENTATION 実験中」が書かれたオレンジ色のテープも増えていき、イベントの盛り上がりとともに、施設内も「実験中」へと変貌を遂げていく様子に、通行人も思わず足を止めていた。


ダンダンに装飾された「UNDER EXPERIMENTATION 実験中」テープ。ミカン下北の通路やお店の前まで、ミカン下北を手がける京王電鉄や店舗スタッフなどさまざまな方が参加しながら、連日実験を楽しむ様子が見られた。
それぞれが実験に乗っかり自由に楽しむ姿を見て、オブジェを手がけたアートディレクターも「下北沢、やっぱりすごいですね」と声を漏らす。街中に突如現れた“実験”を当たり前のように受け入れて楽しむ姿こそが、下北沢の多様性とオープンな地域性を象徴しているように感じられた。
Maria Sakuraiが下北沢を彩る、ライブペイント
イベント会期中、下北沢に施されたアートは前述のインスタレーションだけではない。ミカン下北B街区の大きな壁面「MURAL MEDIA at MIKANSHI MOKITA」には、大手企業へのアートワーク提供なども手掛ける注目アーティスト、Maria Sakurai氏のペイント作品が存在感を放つ。Maria氏が会期中にライブペイントをし、完成させていく製作途中へ立ち入り解禁。本作品も、下北沢らしいアートを通した“実験”の一つだ。タイトルは「Melty Night」。
▼Maria Sakurai氏 Instagramより引用
ライブハウスからの帰り道、音響で揺れる鼓膜が全身を揺らしたまま、夢見心地で帰路につく。道端にしずかに佇む草木にも、この胸の高鳴りを伝えたい。夜のこの時間は、どんな音楽を聴きどんな感情になったか、その全てを肯定する。胸をすくわれる。朝という光に向かって1日を終える。そんな想いが込められた作品。
(出典|Maria Sakurai Instagram)

3月17日製作途中の様子

3月29日作品完成の様子

カメラマンが下北沢へ繰り出し、動き、撮る。下北ワーカー公開撮影会
さらに初日には、ミカン下北がこれまで行ってきた「下北沢で働く価値を高める」実験の一環として、下北沢で働く人に向けた公開スナップ撮影会「Photo at SHIMOKITA-Working in Shimokitazawa」を実施。撮影を担当したのは、いま最も注目したい写真家の一人、是永日和さんだ。まるで映画のワンシーンを切り取ったような、物語を想起させる写真で人気を博す是永さんは、実は下北沢との縁が深く、「僕は下北で育ったと言っても過言じゃないです」とも話す。そんな是永さんの撮影会は、まずミカン下北「オブジェ前」「ダンダン」からスタートした。

続けて「ユニクロ 下北沢店」へ。店舗の一角を開放していただき、ユニクロ店内では「撮影会実施中」のアナウンスまで流れるというコラボレーションの濃さが印象的だった。ユニクロ下北沢店のオーナーに理由を伺うと、「下北沢でお店を構えるなかで、地域のみなさんに本当に感謝しています。そんな普段の感謝の気持ちを、街を盛り上げることでお返ししたいんです」という。
下北沢で働く人々が撮影会のために続々と訪れるなか、「是永日和と申します! 撮影中にやりたくないことがあったら『やりたくない』と言ってください!」という印象的なひとことから幕を開ける。是永さんの個性剥き出しの撮影スタイルに、被写体からは自然と笑顔がこぼれ、ユニクロでの“撮影実験”も大成功。参加者からは、「是永さんのおかげで自然に笑顔になれました」「ちょうど来年から就職なので、とても良い思い出になりました」と言った声が上がった。参加者には「今、実験中」のことを紙に書いてもらうという取り組みも行われ、それぞれが自分と会話しながら筆を走らせた。



参加者に書いていただいた「実験中」シートは、イベント期間中にダンダンで展示された。
また、下北沢で働くことについて参加者たちに話を伺うと、「国籍も性別も趣味嗜好も違った、さまざまな人に出逢えるのが楽しい」という声が多くあがった。是永さんは、「僕はプライベートでもよく下北沢に来るので、下北沢で働く方々とちゃんとお仕事でお会いできてうれしかったです」と、撮影会の感想を語った。
是永氏の撮影はこれだけに留まらず、下北線路街のBONUS TRACKなど下北沢の街中でも“ゲリラ的”に行われた。是永氏自身が街に繰り出し、人々に声をかけその場で撮影していく様子は、まさに下北沢らしい“実験”となった。
▼「Photo at SHIMOKITA-Working in Shimokitazawa」スナップ記事はこちら
https://jikkenku.tokyo/interview/3772/
“未完”であることを肯定する、三社合同展示会
こうした「動」的な実験だけでなく、見て・考える「静」的な実験も同時に行われた。それが、3月20日(金・祝)〜23日(月)の期間で開催された展示会「Craft Session #0」だ。これはミカン下北のブランディングなどを担当しているクリエイティブカンパニー・Konelと、多岐にわたる領域・表現・技術を駆使したソリューションで課題解決を図るクリエイティブカンパニー・AID-DCC、テクノロジーを起点としたデジタルクリエイティブチーム・Think & Craftの三社合同で行われたもの。
三社はこれまで、クローズドで勉強会を行ってきたという背景があり、今回はそれをよりオープンかつ実践的なものにするため、ミカン下北内にあるスタジオ「砂箱」で、「三社合同公開勉強会」と題して、展示会を行った。

展示されたのは、三社から自主的に手を挙げた20名超のクリエイターの作品群。ルールは「B1のポスター」ということのみで、テーマ設定や創り方は自由。そこには、AIを駆使した作品から、地元の和紙を使用した作品、アクリルを使った作品など、それぞれがそれぞれの思いを具現化した、熱のこもった作品群が並べられた。
担当者はこれについて、「展示会を通して、“実験中である”ということをあえて評価しよう・むしろそれがいいよね、ということを伝えたかったんです。それぞれのクリエイターが実験的な姿勢で挑んでくれたことで、良い意味でカオスな展示になったと思います。こんなふうに“未完”を評価することで、立ち寄ってくれた方々が何か感じ取ってくれたらうれしいです。このような多様さを肯定する展示が実現できたのも、下北沢ならではだと思います」と話す。その言葉の通り、本展示は居心地の良さと同時に刺激を与えてくれる、不思議と背中を押されるような展示だった。

「実験中展 -立入解禁-」は、ミカン下北の4周年を祝うだけでなく、長年の間、垣根なく多様な人々が行き交う街として存在感を放ってきた、下北沢自体を祝福するようなイベントだった。後編では、より多くの下北沢で活動する方々が巻き起こした“実験”をレポート。後編もぜひチェックしてほしい。
後編記事はこちら
https://jikkenku.tokyo/interview/3850/
