2023年3月30日(木)~4月9日(日)までの11日間、ミカン下北の開業1周年を記念したイベント『お花見BLACK』が開催された。コンセプトは、「他ではできない黒いお花見体験をあなたに。黒い桜と黒い料理で、特別な春を味わい尽くせ。」 期間中はミカン下北に黒い桜のモニュメントが設置されたほか、飲食店が「黒」「桜」「お花見」のテーマに沿ったメニューを開発。ミカン下北全体が一体感を持って、訪れるお客さんをもてなした。非日常に染まったミカン下北の、1周年イベントをレポートする。
下北沢の桜新名所へ
ミカン下北が開業したのは、2022年3月。「ようこそ。遊ぶと働くの未完地帯へ。」を軸に、あらゆる人・ジャンル・価値観が混ざり合う場所として下北沢駅前に誕生した。開業してから1年、“ミカン(未完)”の名前を体現するように、ミカン下北では固定概念にとらわれない様々な実験が行われてきた。例えば、飲食店でお芝居が観られる『MIKAN SHIMOKITA THE ONE TABLE SHOW』や、ミカン下北をみかんでジャックする『超みかんづくし』など。ミカン下北に集うテナントや人が手を取り合いながら、1年を通じ様々なチャレンジをしてきたのだ。
開業1周年を記念した『お花見BLACK』は、「黒い桜を見ながら黒いフードを楽しむ」下北沢の新しいお花見スタイルを提案するイベントだ。期間中、異様な存在感を放っていたのが大階段に登場した黒い桜。また、施設内各所に黒い提灯が飾られ、施設としての一体感を演出。さらに、ミカン下北で営業する13の飲食店が”黒いメニュー”を開発し、訪れたお客さんに新しいお花見体験を提供した。
『お花見BLACK』が生まれたきっかけは、ミカン下北の飲食店舗スタッフが集まり、1周年企画について話し合う作戦会議の場だった。ミカン下北のテナントが集まる店長会議だった。1周年に向けたディスカッションを重ねる中で、この構想が生まれたのだという。しかし、なぜ”黒いお花見”だったのだろうか。3月に1周年を迎えるので、「春といえばお花見」と連動していくのは理解できる。が、多くの人が思い浮かべる桜のイメージカラーはピンクだろう。
本イベントのプロデューサーであるゲンタ・クラークさんによると、本構想の背景には「下北沢に桜の名所を作りたい」という想いがあった。下北沢周辺にはあまり桜の名所が無いため、「ミカン下北自体を”名所”にしたい」と考えたのだという。ただ、直球で桜を咲かせるだけでは普通すぎる。“未完”というコンセプトを持ち、新しい挑戦や実験に重きを置くミカン下北だからこその“お花見”がしたい。そこで生まれたのが、施設のブランドカラーである黒と桜をかけ合わせるという発想だった。
13店舗が提供した黒いお花見メニュー
『お花見BLACK』では、ミカン下北にある飲食店のうち13の店舗が「黒」「桜」「お花見」というテーマのもと独自のメニューを提供した。中でもダパイダン105と下北六角では、共同メニューを展開。店舗の垣根を超えてコラボレーションした。
『お花見BLACK』のコンセプトに沿った新メニューを開発した店舗もある。
ベトナム料理店・チョップスティックスの秋村さんによると、メニュー開発の背景には店舗で働いているベトナム人からの助言があった。「黒い料理でなにができるかな」と相談し、ホーチミンで竹炭を使った黒いバインミーを出している店があることを知ったという。それをヒントに生まれたのが、「タンドリーチキンと彩り野菜の黒いバインミー」だった。
また、ラーメン店・楽観の谷田部さんいわく、メニュー開発においてこだわったのは「辛いのが苦手な方でも楽しめる」こと。醤油・味噌・黒ゴマペーストを使いつつ、味噌と醤油の味を凝縮。結果、豆乳のコクを感じる辛さ控えめの「黒担々麺」が生まれたという。
【各店舗のコラボメニュー】
※各店でのメニューの提供は終了。
●ザ・トリフターズ
メニュー:こだわり卵の自家製黒いチーズケーキ
緋色の卵でしっとり焼き上げた、濃厚な味わいのチーズケーキ。
●PIZZERIA 8
メニュー:スペイン産ムール貝たっぷりの白ワイン蒸し
スペイン産のムール貝を使用した白ワイン蒸し。ワインによく合う一品。
●THE STANDARD BAKERS
メニュー:ブリオッシュフィユテショコラ
ココアを練り込んだブリオッシュ生地に、国産発酵バターを練り込みベルギー産チョコレートを丁寧に巻き上げた。
●大衆ビストロハルタ
メニュー:イカ墨リゾット
イカ墨を使ったリゾットに塩辛をトッピング。塩味が癖になる。
●下北六角×ダパイダン105
メニュー:桜小籠包とお花見ドリンクセット
下北六角とダパイダン105が共同開発したコラボメニュー。桜海老を練り込んだ小籠包と、下北六角の焼酎・自家製ドリンクのセット。
●ハヌリ
メニュー:ちゅもっぱ(韓国おにぎり)
ひとくちサイズで食べやすい、韓国海苔やナムルなどが入った具材たっぷりのおにぎり。韓国ではヤンニョムチキンのソースやトッポギのソースに絡めて味変を楽しむ。
●チョップスティックス
メニュー:タンドリーチキンと彩り野菜の黒いバインミー
黒いパンにスパイシーなタンドリーチキンと紫キャベツのピクルス、パプリカなど野菜がたっぷり。
●タイ屋台999
メニュー:カオマンガイチキンライス
ニンニク、ショウガ、唐辛子などの入った、タイの黒醤油ソースをかけて食べるタイのチキンライス。
●SHIMOKITA MEAT SPOT
メニュー:黒オリーブとワインセット
本日のおすすめワイン(スパークリング、白、赤)からセレクトし、黒オリーブと一緒に楽しめる。
●Island Burgers
メニュー:オレオシェイク
オレオをふんだんに使用したシェイク。濃厚な味わいとオレオのザクザク食感がたまらない。
●Bar FAIRGROUND
メニュー:ディ・レナルド/パス ザ クッキー!2021
「クッキーあげるよ!」の名にふさわしい、ハチミツや綿菓子のように優しい甘味が広がる一杯。
●楽観
メニュー:黒担々麺
黒い練り胡麻と豆乳を使用しており、濃厚な味わいがクセになる。マー油の香りが食欲をそそる一品。
2年目のミカン下北へ
楽観の谷田部さんは、この1年を「印象に残ることばかり」と振り返る。演劇やお花見など「ミカン下北でしかできないイベント」だったとしつつ、2年目も「ここだからこその独自イベントをお客様に提供したい」と意気込む。「店内での弾き語り」など、音楽を絡めたイベントにもチャレンジしたいという。
またチョップスティックスの秋村さんは、2年目以降も「よりたくさんの人にベトナム料理の美味しさ・楽しさを伝えたい」と語る。あらためて思うのは、「ベトナム料理の普及が僕たちの使命」だということ。これからミカン下北で起きるであろう様々な実験を通し、多種多様な人々にベトナム料理を伝えていきたいと2年目を見据えた。
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この春で、ミカン下北は“2年目”に突入した。昨春に開業した後、この1年ははじめての連続だった。下北沢駅前という立地が客足にどう影響するのか、訪れるお客さんはなにを求めているのか、なにが人気で、なにに可能性があるのか……。手探りながら実験を重ねた1年目が終わり、次は経験を踏まえたチャレンジができる1年となる。
2年目のミカン下北ではどんな実験が繰り広げられるのか?ぜひ期待して見届けたい。