2021年、下北沢駅から徒歩4分の場所にオープンしたカフェ「LOOK UP COFFEE」。このカフェを運営する株式会社LOOK UPは、コワーキングスペース「LUPO」や公認会計士・税理士事務所「LOOK UP ACCOUNTING」といった全く異なる事業も展開している。
この異色の組み合わせの事業を開業からたった3年で展開した背景とは? そして、下北沢という場所を選んだ理由は?
LOOK UP COFFEEの沖田志穂美さん、バックオフィスマネージャーの新原あかりさん、PRマネージャーのローンダー・エマ・順子さん、LOOK UP ACCOUNTING 会計スタッフの中島有紀さん、LUPOで英会話教室の講師を務めるAlisaさんにお話を伺った。
最初のチャレンジ。「LOOK UP COFFEE」のスタート
—初めに立ち上げた事業はカフェ「LOOK UP COFFEE」だったそうですね。どんな経緯で始めたのでしょうか?
沖田:もともと知り合いだった代表の米満から「下北沢でカフェをやりたい」という話を聞いて、「やるとしたらどんなカフェが良いんだろう」なんて話していたところから始まったお店です。当時、米満はすでに東京にいたのですが、創業メンバーの私と新原は鹿児島にいて、「LOOK UP COFFEE」の創業のために上京を決めました。構想から実際にお店を作り始めるまで1年くらいかかりましたね。
新原:私は構想が決まってきた頃に声をかけてもらい、半年後には上京していました。
沖田:そもそもカフェの営業自体、未経験なので不安も大きかったのですが、楽しみの方が勝って。起業に携わる経験なんてそうそうないと思い、チャレンジしてみることになりました。
—開業の場所として、下北沢が選ばれたのはなぜですか?
ローンダー:代表の米満は学生時代から下北沢によく通っていて、カレーの有名店「茄子おやじ」さんでアルバイトをしていたくらいなんです。そんななか、いろいろな繋がりができて、お店を開くなら、ぜひ下北沢にという気持ちになったようです。
新原:私はずっと鹿児島で生活していたので、下北沢がどんな場所か全然知らなかったんです。東京というだけでものすごい都会なイメージがあったのですが、実際に来てみるとイメージしていたよりも、意外と住宅街も多く落ち着きのあるエリアもあって、ユニークな街だと思いました。
ローンダー:昔からの独特なカルチャーもありつつ、ダイナミックな開発も進んでいますよね。新しいことにチャレンジしようとしているLOOK UPにはピッタリな場所だと感じています。
—「LOOK UP COFFEE」という店名はどんな思いを込めて名付けましたか?
沖田:来てくださった方が前向きになれる、気分が上がるお店でありたいと考えて名付けました。
ローンダー:加えて、英語で「尊敬する」とか「見上げる」という意味のlook up to〜という表現があります。カフェや会社をやっていくなかでいろいろなトライアンドエラーがあると思うけれど、私たち自身も前を向いてやっていきたいという思いも込めています。
—内装や商品ラインナップのこだわりを教えてください。
沖田:内装は、ほぼ自分達でDIYしたんです。自分達で作った方が愛着が湧くかなと思って。商品に関しては、日本のコーヒー屋さんに多いハンドドリップに加えて、海外でも人気の高いエスプレッソにもこだわっています。それから、オープン時から植物性のミルクを多く取り揃えています。当時、下北沢のコーヒー屋さんで植物性のミルクに対応しているお店があまりなかったので、やってみようかなと思って。
ローンダー:海外からのお客様も多いので、植物性のミルクは喜ばれますよね。
沖田:たしかに最近は英語で接客することも増えてきました。メニューやInstagramには英語表記も入れるようにしたり、英語での接客に挑戦したりしています。海外のお客様はもちろん、テラス席はペット連れのお客様も利用いただけるようにしていて、オープンなお店にすることも意識しています。
下北沢のビジネスを加速させるコワーキングスペース「LUPO」
—「LOOK UP COFFEE」の次に始められたのが、コワーキングスペース「LUPO」だそうですね。
ローンダー:そうですね、LOOK UP COFFEEの開業から1年後くらいに始めました。もともと代表の米満が利用していたコワーキングスペースが、閉鎖してしまうことになり運営を引き継ぐことにしたんです。
—「LUPO」はどんなコンセプトのコワーキングスペースですか?
ローンダー:「ビジネスを加速させるコワーキングスペース」というコンセプトを掲げています。このスペースを利用していただくことで、ビジネスも利用者さん自身も成長できる、共に事業を推し進めるインキュベータのような存在を目指しています。
ローンダー:「LOOK UP COFFEE」と共通して、「LUPO」もオープンなスペースにすることを心がけています。個別に黙々作業できるスペースももちろんありますが、同じスペースで作業している人同士が関われるような、オープンなスペースも豊富です。そのため、利用者さん同士の繋がりによってよりビジネスが加速するようなこともあります。利用者さんからも「アットホームな環境が良い」「集中したい時も交流したい時も使える」といった声を寄せていただいています。
—利用者の方はどんな方が多いのでしょうか?
新原:やはり近隣に住んでいらっしゃる方が多いです。自転車で来られる方、小田急線沿いに住んでいて電車で来られる方など。渋谷までは行きたくないけど外で作業したいといった方が来ることもあります。
ローンダー:職業的にはデザイナーさんやイラストレーターさんなど、クリエイティブ系の方が多いです。でも、コンサルタントの方や大学教授の方など、全然違ったお仕事の方もいらっしゃって、この混ざり合った感じが下北沢ならではだなと思います。
新原:「LUPO」では夜に「LUPO HAPPY HOUR」という交流会をすることもあります。そういった場で、利用者さん同士が関わって新たな繋がりやビジネス的なコラボレーションが生まれることもあります。
—「LUPO」では英会話教室「LUCEE」も開催されていますよね。
ローンダー:はい。もともと朝に「LOOK UP ENGLISH」という英会話教室をやっていたのですが、2023年10月から新たに「LUCEE」を始めました。「CNN ENGLISH EXPRESS」という教材を使った英会話教室で、ディスカッションを中心に中級〜上級レベルの授業をしています。もっと自由に英語で発言したいと感じている方々が参加しています。
—講師を担当されているAlisaさんは、授業を作るにあたって意識していることはありますか?
Alisa:英語能力を伸ばすだけではなくて、純粋に話していて面白いと思ってもらうことを大切にしています。答えを提示するのではなく、「あなたはどう思う?」「私はこう思う」といった質問や対話を通して、考える力の付くディスカッションの場にできたら良いなと。参加者の皆さんからよく言われるのが「日本に住んでいると自分の意見をはっきり主張する場面があまりない」ということ。海外に出たら意見を求められることはよくあると思うので、ただ正しい英語を話せるようになるのではなく、考えを伝えられるようになってもらえたら嬉しいです。
クリエイターの苦手分野「会計」をサポートする「LOOK UP ACCOUNTING」
—「LUPO」に続いて、最後にできた事業が「LOOK UP ACCOUNTING」ですよね。どんな経緯で会計事務所を始めることになったのでしょうか?
新原:「LOOK UP ACCOUNTING」を始める前から、企業さんのコンサルティング業務は行っていました。ただ、「LUPO」で様々な個人事業主さん、企業さんと関わるようになって、会計業務を苦手としている方が結構いることに気付きました。本筋の業務は得意ですごい力を発揮しているけれど、会計の話になると躓いてしまうような。せっかく代表の米満が公認会計士・税理士の資格を取得しているので、そういった部分をサポートできないかと思い、事務所を設立することにしました。
—「LUPO」では、「オールfreeeデイ」というイベントも開催されていますが、これはどんなイベントですか?
ローンダー:当社が提携している会計ソフト「freee」のユーザーさん向け無料イベントです。freeeの有料版をご利用されている個人事業主の方が「LUPO」に集って、一緒に経理作業をします。他にも、会計・税務相談会を開催し、必要に応じて「LOOK UP ACCOUNTING」の会計スタッフが参加者の相談に対応し、サポートする機会を設けています。
ローンダー:「LUPO」の利用者さんは、毎月開催している会計・税務相談会に無料で参加したり、「LOOK UP ACCOUNTING」の行う個別相談や顧問契約のサービスを特別プランで利用することも可能です。お金周りの悩みってなかなか相談先が見つけづらいし、知り合いにも話しづらいと思うのですが、そういった場面に活かしていただければと思って運営しています。
—中島さんは、会計スタッフとして実際に相談を受けられています。「オールfreeeデイ」などの相談イベントに来られる方からはどんな声がありますか?
中島:1回は自分で調べてみたけれどよく分からなかったという場合に相談をいただくことが多いです。実際、調べてもいろいろな情報が出てきてしまうので、分かりづらいですよね。なので、その場で回答しながら一緒に解決していきます。実際参加された方からは「専門家に一緒に見てもらえて安心した」と言っていただくことが多く、嬉しく思います。どんな細かいことでも質問していただいて大丈夫なので、気軽に来ていただきたいです。
繋がりの生まれる街・下北沢だからこそ新たなチャレンジをし続けられる
—ここまでのお話を聞くと、会社設立から毎年一つずつ事業が増えているんですね。そのように新しい実験を続けられるのはなぜですか?
ローンダー:スタートアップのように、新しいものを受け入れ、取り入れていくマインドセットが自然と会社に根付いているんだと思います。もちろん社内でいろいろと議論するときはありますが、社名の通り「LOOK UP」で頑張ろうと邁進しています。
新原:できない理由ではなくて、できる理由を考えて、それをひたすら実行している感じです。私もこういった仕事は初めてですが、それでも楽しみながら挑戦できています。
—様々なチャレンジをするにあたって「下北沢」という場所は皆さんにどんな影響を与えていますか?
新原:「LUPO」の環境とも共通しますが、下北沢は街自体が繋がりを生む場所のように感じています。横の繋がりが広いし、優しい声をかけてくれる人がたくさんいる。だからこそできるチャレンジが多いのではないでしょうか。
ローンダー:そうですね。例として、下北沢拠点のデザイン事務所「あおとき」さんに私たち「LUPO」のロゴを作ってもらったり、利用者さん同志もお互いに助け合いながら仕事している感覚があります。下北沢らしい新たなチャレンジをしている方々がたくさんいらっしゃるので、私たちも一緒にチャレンジをすることはもちろん、経理面からサポートすることもできればと思っています。
—最後に、株式会社LOOK UPとしての今後の目標を教えてください。
ローンダー:下北沢の皆さんが上を向いて新たなものを生み出していける世界を作れればと考えています。新しいことを始める時って、「怖い」と「ワクワク」が混ざると思うんですよね。でも、そんな時に迷わず「ワクワク」に賭けられる人を増やすような場所、機会をご提供したいなと。私たちは、働くスペース、会計面のサポート、ほっとできる場所としてのカフェと、3つの事業を展開しています。ビジネス面からも暮らしの面からも下北沢を盛り上げていきたいと考えているので、気軽に頼ってもらえたら嬉しいです。